作品タイトル不明
65「地元の川がやばくね?」②
――ごうん、ごうん、ごうん。
謎の音が響く。
「はわわわわわわわわわわわわわわ」
「あわわわわわわわわわわわわわわ」
「うぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴ」
夏樹、一登、杏が未知なる展開に驚く。
――ごうん、ごうん、ごうん。
大きな何かが動くような、未来の機械的な音が響くと同時に、川が割れて階段があらわとなっていく。
「――階段!?」
「――川に!?」
「――なにこれ!?」
一分。
短いようでとても長く感じる時間だった。
「さあ、ボーイアンドガール。俺たち河童の秘密の場所にカモン!」
てちてちと歩いていくハードボイルド河童ジェイソンに、恐る恐る夏樹たちも続いた。
階段の幅は成人男性が手を広げるには少し狭いくらいだ。
これといって明かりが無いのに、足元はしっかり見えている。
川の水で足元は濡れているが、水は下へ向かったようで水没する気配はなかった。
「……もしかして、地底人が待っているとかないよね?」
「ありえないって言いたいんだけど、ここ、向島市だもんねぇ」
「杏知ってる! 地底湖に未知なる生物が住んでいるんだよね!」
「そんなB級パニック映画みたいな。え、でも、やっぱりここ向島市だし。呪いの家もあったし、地底湖もありえるかもしれない、かな?」
誰よりも混乱しているのは一登なのかもしれない。
夏樹は混乱よりも、期待が大きい。
杏は、河童の子供を抱っこしているせいで、動揺は小さかった。
「はっはっは。残念だが、地底湖はないさ。代わりにもっと良いものがあるぜ!」
夏樹の脳裏には、向島市を悪の組織から守る秘密基地が浮かんでいた。
「さ、こっちだ」
川の下に向かっているとは思えない、長い階段を降りると、そこには――滝があった。
「さすがにありえねぇええええええええええええええええええ!」
「どえぇえええええええええええええええええええええええ!?」
「嘘ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
三人が絶叫するのも無理はなかった。
地下に続く階段の先には、幻想的な光景が広がっていた。
鍾乳洞の中に、滝があったのだ。
「――っ、この空間、魔力に満ちている」
「気づいたか、ボーイ。本来ならば、人間のボーイたちに高密度の魔力は毒になってしまう可能性があるが、不思議なことにボーイたちの力の根本は魔力だ。ならば、と思ってな」
「さすが、さすがですジェイソンさん! かつて俺を救ってくれたことにもずっと感謝していますけど、今回も助けてくれるなんて!」
「よせよせ、何度もいうが俺はしがない河童だ。偶然、ボーイたちと出会い、ちょっと手伝いをした。すべて、宇宙の導きさ」
「かっけぇ」
ジェイソンが何者か気になるが、恩人を疑ったりはしない。
これほどの魔力がある空間ならば、すべての魔力を「食い尽くす」ことで力は強化されるだろう。
ジェイソンが言ったように、夏樹の力は魔力に依存している。
霊力も神力も、根本的な力は同じだが、種族や力の使い方によって違ってくる。
だが、基本的には魂の力、もしくは精神の力だ。
魔力に関して突き詰めると仮説が多いのでキリがない。
問題はそこではない。
夏樹にとって魔力が豊富であることが大事だった。
「待つんだ、ボーイ。俺は言ったぜ。修行だってな。ここにある魔力をボーイが吸収したところで、食べ物と同じだ。消化されてしまう」
「ですが!」
「一時的には強くなるだろう。だが、それでは駄目だ。そこで、修行だ」
「ジェイソンさんが?」
「ち、ち、ち。俺はボーイに何かを教えるほど強くないさ。おい、そろそろボーイたちに姿を見せたらどうだ!」
滝壺に向かいジェイソンが声を張り上げた。
「――まもんまもん」
「何者だ!」
「夏樹くん!? 本気で言っているの!? 今、思い切り自己主張してたじゃん!?」