作品タイトル不明
64「地元の川がやばくね?」①
トレンチコートを身につけたハードボイルドな雰囲気を醸し出す河童ジェイソンは、河川敷を歩いていく。
現在は潮が引いているようで、河口に近いこの場所は影響を受けて川底が見えていた。
「来るんだ、ボーイたち」
「えっと、はい」
河童全肯定の夏樹でも、こんな浅い川にどのような導きがあるのかわからない。
「――まさか、シーバス釣りをするのか!?」
「いやいやいや、さすがにないでしょう!」
「潮が引いたタイミングって釣果でるじゃん!」
「そうだけど! そうだけどさ! 俺たちもジェイソンさんもロッドを持ってないじゃん!」
「お兄ちゃんと一登の会話の意味がわからないよ!?」
釣りが趣味な夏樹と一登に対して、釣りがわからない杏は置いてきぼりだ。
「はっはっは、釣りはまた今度にしようぜボーイ。おすすめの場所を教えてやるぜ」
「じゃあ、何をするために、どこに」
「ふっ、愚問だな。男の子が躓いてしまったら、することはひとつさ」
ごくり、と夏樹たちがジェイソンの言葉を待った。
「――修行さ」
「修行回きたぁああああああああああああああああああ!」
念願の展開に夏樹がガッツポーズする。
一登と杏は、この流れはもう止められないパターンだと諦めた。
「はっはっは! 喜んでもらえて嬉しいぜ、ボーイ!」
「で、ですが、こんな河川敷で夕陽をバックにするのは修行ではなく喧嘩のはず」
「もちろんわかっているぜ」
一登と杏が「いや、喧嘩もしねーよ。いつの時代だよ」とツッコんでいるのだが、夏樹とジェイソンには聞こえない。
「これからボーイたちを俺たち河童族の秘密の場所に連れて行ってやる。そこで、導き手が待っているぜ」
「――か、河童さんたちの秘密の場所、ですか! 膝が震えるほど嬉しい!」
「よせやい、ボーイ。そんな大したもんじゃねえ」
がくがく膝を震わせて喜んでいる夏樹だが、冷静な部分が浅瀬の川からどこに行けるのだろうか、と考えてしまう。
対岸ならば、橋を渡ればいい。わざわざ川の中を歩く必要があるのかと悩んでいると、ジェイソンが足を止めた。
「今からすることは、俺たちの秘密だぜボーイアンドガール」
「うっす!」
「あ、はい」
「はい!」
夏樹は敬礼し、一登は戸惑い気味に、杏は河童さんを抱きしめながらジェイソンに頷いた。
「――開け、尻子玉」
ジェイソンが魔法の言葉を口にしたと同時に、――川が割れた。
「えぇぇぇぇえええええええええええええええええ!?」
「嘘ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
「うわぁあああああああああああああああああああ!?」
中学生三人は、まさか生まれ育った地元の川にこのようなギミックがあったのかと大絶叫した。