作品タイトル不明
62「ご期待に応えるしかなくね?」
加座間源蔵が月読ファミリーに加わったところで、夏樹が「はい!」と手を挙げた。
「どうぞ、夏樹くん」
「死の神に関してですけど、月読先生が出るまでもねえすよ。この由良夏樹にお任せくだせ。ひひひ」
「……どんなキャラですか。いえ、そうではなく。はっきり言いますね」
「うっす」
三下キャラみたいに揉み手をしている夏樹に、月読は告げた。
「死の神は未知数な相手です。今の君では勝てるかどうかわかりません」
「…………」
「それは私も同じです。死の神は今まで公に活動をしていません。どのような力を持っているのか不明点も多いのです。しかし、死の神は死を司る神であるはず。死はすべてに置いて平等です。夏樹くんも、私も、です」
しん、と空気が静まり返る。
死の神が現れた時、想像を絶する圧迫感に押しつぶされた面々は苦い顔をしている。
夏樹だけが、死の神を前に平然と立っていた。
そんな夏樹が勝てないかもしれない。
どんな相手でも笑って戦い勝利を掴んできた夏樹が勝てないとは、どれほど強いのかと絶望しそうになる。
だが、考えれば、死とは誰も逃れられない概念だ。
夏樹も人間である以上、いつかは死ぬ。
だからと言って、死の神と戦って死んでほしくはない。
「私は、他の新たな神々と交友は少なかったからな。死の神の力については知らん。すまないな。だが、それでも、どの神々も死の神に一目置いていた。決して楯突かない。余計なことも言わない。自由にさせていた。それだけ、恐れられていた神だ」
学校の神こと萌乃萌葱も情報を伝えてくれるが、逆に、死の神が厄介であると言われたようなものだ。
「――わかりました」
俯いていた夏樹が顔を挙げた。
誰もが、――おや? 聞き分けがいいな。偽物か? と、訝しむ。
「――俺、修行します!」
「そう言う問題じゃねえぇええええええええええええええええええええええ!」
激しいツッコミを叫んだ千手だけではない。
夏樹に注意をした月読も、この場にいたすべての人が思った。
――あ、焚き付けちゃった。
夏樹は負けず嫌いな一面がある。
そんな夏樹が「勝てないから戦うな」と言われて、素直に言うことを聞くわけがない。
一応は、今すぐ戦おうとしないだけ、聞く耳はあるかもしれないが、違う。
違うのだ。
そうではない。
今の夏樹で勝てないのなら、強くなればいいという思いは素晴らしい。立派だ。
しかし、月詠が言いたいことは「戦うな」だ。
「……少し遠回しにいった私がわるかったようですね」
「由良は、前向きでいい子なんだが。なるほど、こういう時には悪い意味で前向きなのか」
「あの、権藤先生。感心していないで、止めるのを手伝ってくれませんか?」
「いやぁ、私は霊能関係はちょっと。そちらの七森康弘さんが、月読先生に私のような強面が控えていた方が威厳がでるとおっしゃったので付き添っただけでして」
「どうして権藤先生がいるのか不思議だったのですが、そんな理由だったのですか!?」
やる気満々の夏樹、困惑する月読。
そして、どうすればいいのかわからない一同を見て、義政は肩をすくめた。
「やれやれ、ですね」
「……君なんかすごいショタボーイだね。中の人っていくつ?」
「中の人ってなぁに?」
「急に子供っぽくなった! 何この子、おもしろい!」
そんな義政に沙也加が瞳を輝かせていた。