作品タイトル不明
53「やべえのとやべえのが出会いました」①
由良夏樹は膨れっ面だった。
月読に言われ、死の神と戦えなかったこと、加座間吉座を引き渡してしまったことが不満だったのだ。
「ぶーたれてんじゃねえよ、由良。さすがに死の神と戦うのはやべえだろ。あの、プレッシャーやばすぎたぜ。立っていることも息をすることもできなかった……二度と会いたくねえな」
「……ぶー! ていうか、俺はなんともなかったんですけど!」
「そりゃお前も十分すぎるほど規格外だからだよ! なんで同じ勇者の佐渡と三原が圧で押しつぶされていたのにお前は平気なんだよ!」
「やっぱりそこはギャラクシー河童勇者かそうでないかの違いだと思うよ」
「……でっけー違いだな」
正直に言えば、戦えばどちらかが死ぬとは思った。
負けるつもりで戦うことはしないが、「少し危ういかもしれない」とは考えてしまった。
しかし、死の神は夏樹と戦う気がないと言った。
だが、あの目は無駄なことをする必要はないという目だった。
――戦えば夏樹が死ぬということがわかっているので戦うだけ無駄だと死の神が考えているのがわかった。
「俺としてはあのスカした死の神をぐっちゃぐちゃにしないと気が済まないんだけどね。とりあえず、あの野郎の弱みを握って徹底的に追い詰めよう」
「やめろっ!」
てしんっ、と頭を叩かれて怒りに唇を噛んでいた夏樹が我にかえる。
「……はぁ。ま、いいや。それにしても、なんで千手さんたちが加座間さん家の源ちゃんと会っていたの?」
「情報を得るために例の女性に接触しようとしたんだが、まさかの本人が来ちまったってことだ」
「例の女性?」
「ほら、佐渡の同志だよ」
「あー」
千手があえて名前を呼ばない理由を理解した。
外で「ショタエルフ侍らせてえさん」とは言いづらいだろう。
「えっと、その人ってどこに?」
「はーい! 私でーす!」
黒髪をポニーテールにした快活そうな二十歳ほどの女性が元気一杯に手を挙げる。
「君のことは人外っ子プリンスからよく聞いているよ」
「人外っ子プリンスって……あ、説明はいいです。どうせ祐介くんだし」
「せいかーい! 私はショタエルフ侍らせてえです! よろしくね、ギャラクシー河童勇者さん!」
「――っ、よろしくお願いします! ショタエルフ侍らせてえさん!」
まったく躊躇いなく夏樹をギャラクシー河童勇者と呼んでくれた女性に、夏樹はささくれていた心が穏やかになった。
思えば、夏樹のことをギャラクシー河童勇者と素直に呼んでくれた人はどれくらいいるだろうか。ほぼいない。茨木童子くらいだが、彼は彼で夏樹の名前を知ったら呼ぶのをやめてしまった。
夏樹は感動しながら、ショタエルフ侍らせてえさんから差し出された手を力強く握りしめた。
「おい、そこのやべえのとやべえの。魂の名前で呼び合うんじゃねえよ。戸籍に載っている名前で呼び合え」
「おっと、これは失礼しちゃったね。私は、川崎沙也加。加座間家でショタ人外専用の使用人やってまーす! あ、大学生でもあるよ!」
「俺は由良夏樹です! 異世界で勇者やってました! あ、今は中学生だよ!」
「いえーい!」
「いえーい!」
握手からハイタッチに切り替える二人を見て、千手は確信した。
「――こいつら、同族だ!」