作品タイトル不明
間話「抜け駆けじゃね?」①
――青森某所。
「おーい、マモン! いないのかー?」
さまたんは部下にして友人にして幼馴染みである七つの大罪の魔族にしてまもんまもんの伝導者マモンをさがしていた。
「あいつ、どこにいるんだよ?」
畑におらず、家の中にもいない。
近所の人たちとお茶でも飲んでいるのかもしれない。
もしくは、つちのこを探して周平たちと野山を駆け回っているか、高橋のおじいちゃんに狩猟を教わっているかだろう。
「まったく。今日はあいつが動画編集する日なのに。ま、私はできる上司だから代わりにやってやるくらいはいいんだが。むしろ、動画編集は割と私がやっているしな! そろそろ良いパソコンを買っても許されると思う!」
そんなことを言いながら、大きめのマグカップにインスタントコーヒーを淹れてテーブルに移動する。
ノートパソコンを開いて起動する。
「さてと――――んんんん?」
眼鏡を装備してパソコン画面を眺めていると、おかしなファイルを見つけた。
「なんだよ、このファイル名は。デンジャラススーパーワンダフルアトランティックまもんまもん動画って。アトランティックまもんまもんって、お前、サーモンじゃねえんだから」
無駄に長く主張が強いファイル名から察するに、隠すつもりはないようだ。
そもそも共有のパソコンで隠し事をしたいのであれば、デスクトップにでんっと貼り付けたりしない。
「嫌な予感というか、面倒くさそうな予感がするけど、ま、いつものことか」
マウスを操作してファイルを開くと、ひとつの動画があった。
「……見ろって、ことだろうなぁ。嫌だなぁ」
そう言いながらも、さまたんは動画をクリックした。
当たり前だが、動画の再生が始まる。
「うわぁ」
つい、変な声が出た。
動画の中には、どこで撮影しているのか不明だが、中世の王宮にありそうな玉座に座りながら膝の上にいる三毛猫を撫でるマモンの姿があった。
お馴染みのグレーのスーツに身を包んでいるが、最近では標準装備している割烹着と長靴ではなくよく磨かれた革靴を履いていた。
よく見れば、スーツもクリーニングに出したのだろう。ぴしっとしている。
「………………………」
「いや、なんか言えよ! 猫撫でるのに夢中になってんじゃねえよ!」
動画の中のマモンは、うっとりした顔をして三毛猫を撫で続けていた。
可愛い少女のものと思われる咳払いが動画の中で響くと、マモンがはっとして正面を向いた。
「こりゃ、亜子ちゃんもいるな」
何を企んでいるのか知らないが、きっと愉快な動画になるのだろう。
そう確信して続きを見る。
「――まもんまもん。この動画をさまたんが見ているということは、きっと青森にこのマモンはまもんまもんといないでまもんまもん」
「さらりと脱走宣言してるんじゃねえよ!」