作品タイトル不明
51「なんかやばいのが来ちゃったんじゃね?」②
圧倒的な神力が圧となって降り注ぐ中、由良夏樹だけが平然と立っていた。
「――お前のことは知っている。絶望の神と門の神を倒した由良夏樹だな」
「ぜっくんは俺じゃねえよ。ていうか、プレッシャーかけないと登場できない呪いとかにでもかかってんの? そうじゃないのなら、鬱陶しい神気を発するのやめろ」
どこからともなく現れたのは、青年――の姿をした神だ。
このタイミングで現れたのであれば、加座間吉座と協力関係にある新たな神々である「死の神」だろう。
神は二十歳ほどの青年に見える。
ジーンズとシャツをきて、裸足の青年は、興味なさげに夏樹と視線を合わせる。
次の瞬間、夏樹から白い雷が迸り神を襲う。
殺せはしないだろうが、それなりのダメージを与えられるという確信があった。しかし、雷は神に届く前にかき消された。
「へぇ」
神気が霧散し、千手たちが大きく息を吐き出し、肩で息をしながら動き始めた。
「由良ぁ! そいつはやべえ!」
「――うん。わかっている。だから、逃げてほしいかな」
夏樹は千手たちを一瞥すると、すぐに神に視線を戻した。
正直、絶望の神や門の神、花粉症の神などと会ってきたが、彼らよりも感じ取れる力は上だ。
(――サタンさんとか花子さんに丸投げしてぇ!)
「あんた、死の神であっているよね?」
「ああ」
「吉座くんと組んでいるみたいだけど、不老不死に興味津々なお年頃ってことで良い?」
「不老不死か……あればいいとは思っている」
「うん?」
「それだけか?」
「あー、うん」
「話がもうないのなら、加座間吉座を渡せ。私たちはお互いに利用している関係ではあるが、そいつのために戦うほど暇ではない」
「あら、厳しい。でもさぁ、吉座くんをはいそうですか、って渡すと思う?」
「渡した方が良いだろうな。私なら、そうする」
「なぜ?」
「人間は死にたくないのだろう?」
なぜか言葉の意味が違うように聞こえたが、まあいい。
会話ができるのであれば、会話をする。
――と見せかけて、奇襲して殺してしまおう。
夏樹はそう考えてみたものの、隙がない。
ただ立っているだけの死の神はあまりにも自然体だ。
おそらく、夏樹を敵として認識していないのだろう。
「場所がここでなければ」
唯一悔やむのは、大学前という人が多い場所で神と邂逅してしまったことだ。
相手がどうでるかわからないが、夏樹としては不必要な人間を巻き込みたくない。
いや、別に巻き込んでしまっても、必要があったと割り切ることができるだろうが、きっとその考えは間違っていると理解しているのでしないだけだ。
「さて、どうしよっかなぁ」
何度か魔力を当てているが、死の神は眉ひとつ動かさない。
「私は待つことを得意としない。どうする?」
「あ、ちょっとタイム。電話かかってきた。出ていい?」
「…………構わない」
少し間があった気がするが、良いと言ってもらえたのでスマホを取り出して通話をタップする。
「へい、こちらギャラクシー河童勇者警察八七六〇時間!」
「――夏樹くん、加座間吉座を死の神に渡しなさい」
スマホの向こう側から、月読命の静かな声が響いた。