作品タイトル不明
50「なんかやばいのが来ちゃったんじゃね?」①
「ちょ、千手さん! スマホ返してよ! お電話できない!」
「由良ぁ! 月読様は加座間家と死の神に関わるなっていったんだから、友達呼ぶみたいにフランクに呼ぶんじゃねえよ! いや、俺も月読様に判断してもらわないと終わらないことだとは思うが、もっと他にやり方があるだろ! わかんないって感じで首かしげんな!」
意図せずとも加座間家に関わっただけではなく、加座間家当主加座間源蔵と、その息子吉座まで出てきてしまった。
しかも、吉座に至っては夏樹を襲撃したのだ。
この流れだと間違いなく死の神が出てくる。
もしかしたら、もうその辺りにいるかもしれないとさえ千手は思う。
「とにかく、まずは月読様に謝るんだ。何を言われても、言われなくてもごめんなさいと言うんだ。いいな、由良?」
「…………えっと、これ、俺が怒られる流れ?」
「襲撃されたことは仕方がないとして、ビルを破壊するのはやり過ぎだろう」
「……源ちゃん、残念だけど、月読先生には頼れないようだ」
夏樹の判断は早かった。
怒られたくない一心で、先ほどの言葉を翻してしまう。
これには源蔵も目を剥く。
「……なっちゃん、そんな」
「俺と源ちゃんの仲だけど、ごめん」
「いや、由良と加座間源蔵のどこに友情が芽生えているのかわからねえけど、面倒臭えからそういう寸劇はすんな!」
「じゃあどうすればいいの!?」
「一緒に俺も怒られてやるから」
「――とぅくん」
「……わざとらしくときめかなくていいから」
千手は疲れたように呟く。
源蔵の背後にいる女性――川崎沙也加が夏樹と千手のやりとりを見て「じゅるり」という謎の音を立てたが、夏樹は特に気にせず、千手は聞こえないことにした。
「ただ、電話をする前にこの場から離れるぞ。青山の姉御にビルがぶっ壊れた話は伝えてあるから、警察が動いてくれるだろうが……」
幸にして、綺麗に吉座がいたビルだけが倒壊しており、周囲には一切被害がない。
しかし、轟音が響いたせいか、周囲や大学から「何事だ」と近づく人もいる。
写真でも撮られようものなら面倒くさいことになること間違いない。
「まずは、ここから離れるぞ。どこか良い場所――――が」
千手が言葉の途中で、その場に突っ伏した。
「千手さん!?」
夏樹が千手の名を呼ぶと同時に、次々とこの場にいる人が倒れていく。
その中には、一登、杏、すみれもいた。
祐介と源蔵、そして沙也加も、地面に倒れて動けずにいる。
「――残念だが、お前たちをここから逃すことはできない」
低い男の感情のこもらぬ声がした。