作品タイトル不明
49「敵はちゃんと絞めなくちゃいけなくね?」②
「かかか。再会を喜ぶことはよいが、そこから出てきてはどうかな? 今更瓦礫で怪我をすることはないだろうが、できればそこで悶絶している息子と、わしを裏切った人間も連れてきてくれると嬉しい。ふたりには聞きたいことが山のようにあるのだよ」
「……つまり、あんたが?」
「――加座間家当主。加座間源蔵。お初にお目にかかる、由良夏樹殿」
「どうも。ギャラクシー河童勇者にして河童の守護聖人由良夏樹ですっ!」
横チェキをして自己紹介をする夏樹に、源蔵は少し困った顔をしてから横にいる千手の顔を見た。
「…………あれが素だ。諦めて話を進めろ」
「かかかかか。面白い子ではないか」
「面白いのは認めるが、疲れもするぞ」
「良き良き。男の子は少しくらいやんちゃな方が良い」
杖で地面を叩きながら笑う源蔵から悪意は感じない。むしろ、好意を感じ取ったので、夏樹は初対面にも関わらず、お願いを素直に聞いて悶絶中の加座間吉座と側近の男の襟首を掴んで瓦礫を蹴飛ばしてビルから出た。
夏樹の後に、一登、杏、すみれが続く。
「お前たちもいたんだな。――って、ひとり知らない顔がいるが、まさかまたなんかやべえ子じゃねえだろうな?」
千手がすみれを見つけて訝しむ。
「え? すみれさんは転校生だよ!」
「転校生の青春すみれです! よろしくお願いします!」
「お、おう、七森千手だ。ご丁寧に、どうも?」
すみれの正体に関しては後でいいだろう。
ここで話すことではないし、不用意に正体を口にするものではないと夏樹は考えた。
「はい、どうぞ。おじいちゃん」
「ありがとう、由良殿」
「なっちゃんって呼んでいいよ」
「かかか。ならば、わしのことは源ちゃんって呼んでもよいぞ」
「オッケー! 源ちゃん! しくよろー!」
「かかかかかかか! 大物だ! これは大物だ! これでは我々は勝てんな、七森の」
フレンドリーな夏樹に、源蔵は呵呵大笑する。
裏の社会で不気味がられてきた老人にとって、裏表なく接してくる夏樹は新鮮であり、眩しかった。
「大物っていうか、ぶっ飛んでんだよ。ていうか、あんたは別に敵対していないだろうが」
「かかか。息子がやからしてしまったからな。さて、なっちゃん」
「なんだい、源ちゃん」
「……なっちゃんって呼ぶのかよ。由良も源ちゃんって呼ぶのかよ、マジかよ」
千手が呆れたように額に手を当てているが、夏樹も源蔵も気にせず続けた。
「わしね、そこのバカ息子のせいで困ってるのだよ」
「まじかー。バカ息子、ちゃんとしろよぉ! 親孝行しろよぉ!」
倒れる由座を夏樹がゲシゲシ蹴る。
「死の神をバックにつけて、俺は強いぜーって勘違いしてしまうし」
「だっせー! 自分は強くないのに?」
「それそれ!」
「嫌だ嫌だ! 虎の威を借る狐だっけ、そういうの嫌―い!」
「わしもー」
千手たちが「なんだこれ。ていうか、なんでふたりはこんな友達みたいに会話してんだよ」と内心で思うが、邪魔をすることはしなかった。
少なくとも話は進んでいる。
「それでそれで、源ちゃんは千手さんや祐介くんと接触して何がしたいのー?」
「わしはねー、愚かな息子に手を貸す死の神を殺したい。そのために、月読命様にお目通願いたい」
「オッケー! ちょっと連絡するね!」
「ほえ?」
「待てぇえええええええええええええええええ! 由良ぁああああああああああああああああ!」
友達が友達に会いたいくらいの感覚で月読に電話しようとする夏樹から、全力で走ってきた千手がスマホを奪い取った。