作品タイトル不明
46「仕返しするのは基本じゃね?」③
――大学の一角で七森千手と佐渡祐介が、川崎沙也加と加座間源蔵と話をし、加座間吉座から由良夏樹を襲撃し攫うと脅された数分後。
「吉座様、よろしかったのですか? 素性もわからぬ者を雇うなどおっしゃって」
加座間家当主の座を狙う、加座間吉座は廃墟となったビルを占拠して父親の動向を探っていた。
吉座は父親源蔵側にいながら、金の力で自分の味方につけた男の苦言に鼻を鳴らす。
「――はっ、俺がそこまで間抜けに見えるか? 使えないはぐれたちを処理してくれたのは助かるが、標的の由良夏樹を横から掻っ攫われたおとしまえはつけてもらわんとな。逃げられても困るから、来る口実を作ってやっただけだ」
「……つまり、吉座様はこれから来る者を亡き者にする、と」
にやり、と吉座が笑う。
「どこのどいつか知らないが、敵になる可能性が少しでもあるのなら処理しておかないとな。俺は、憂いはきちんと断っておかなければ気が済まないタチでな」
この考えには、味方への戒めもある。
父親から自分についた連中に、少しでも怪しい素振りをすれば同じ目に遭わせるという忠告だ。
その意図がわかっているからこそ、側近の男が青い顔をする。
何よりも、吉座の協力者に「死の神」がいるのだ。
新たな神々であろうと古き神々であろうと関係ない。
人間を超越した存在である「神」に逆らう術はもたないのだ。
「親父も今頃慌てているだろうな。まさか、月読命に接触しようと企んでいるとは驚きだが、神々が人に関わるはずがない。そもそも、あんな若造たちのどこに神とのツテがあるものか!」
まさか吉座も向島市の中学校に月読命が教師としていることを知る由もない。
そして、攫おうとした由良夏樹が普通に月読命と連絡取れること、所属する院のトップである素盞嗚尊と親友であることも、やはり知る由がなかった。
「霊能力者なんてどうだっていい。これからはビジネスだ! 好事家たちに人外どもを売り捌き、金を手にいれる! そして、金を一生使いづけるんだ! 神の力で、俺は――」
――唾を飛ばし吉座が己の欲望を語っている途中、頭上から雷が降ってきた。
「――――――――――――――――」
「――――――――――――――――」
ビルが崩れ、吉座たちは言葉も出せず瓦礫の中に飲み込まれていく。
まるで雷が裁きを与えようと落ちたようだ、とその場を見ていた者は口々に言った。
■
「あー、やっぱりこうなったか。なんで、俺たちの名前と顔を把握しているのに、一番喧嘩売ったらいけない奴を把握していないんだよ! 加座間家! 情報収集が甘いんだよ!」
大学のカフェテリアで七森千手がテーブルを叩いた。
何が起きたのかわかっていない川崎沙也加と加座間源蔵だけ呆けた顔をしている。
「はい、終わり! お疲れ様でした! 解散!」
千手は事が終わったものとして、手を叩く。
佐渡祐介も否定せず、帰り支度を始めた。
千手はスマホを操作すると、離れた場所に待機している神奈征四郎に「もう話は終わったって言うか由良が出てきた」とだけメッセージを送る。
すぐに「もうわかっていた」と返事が来た。
それだけで伝わる。
――今回の喧嘩は加座間吉座の負けだ。