作品タイトル不明
間話「まもんまもん流じゃね?」
――青森某所。
「一まもん! 二まもん! 三まもん!」
早朝。
家の前で、七つの大罪の魔族マモンは、道着を着て正拳突きをしていた。
「……なにやってんの、お前?」
歯を磨きながら呆れた声を出すのは、かつて魔界の覇権をかけてサタンと戦った過去を持つサマエルだ。
現在は、青森で農家をしながら、動画配信をしている。
部下であり幼馴染みであるマモンがサタンへの叛逆を試みた結果、中学生由良夏樹に敗北したことにより、命までは取られなかったが、ペナルティーとしてしばしサマエル預かりになった。
その後、マモンが動画配信を始めると人気が出てしまい、可愛い恋人、友人に囲まれ慌ただしくも楽しい日々を送っていた。
目の前の奇行も、そんな日常のよくあることだ。
「これはこれはさまたん、おはようございまもんまもん」
「お、おう、おはよう」
汗を輝かせて朝の挨拶をするマモンは、帯をきゅっ、と締めると再び正拳突きに戻る。
「一まもん! 二まもん! 三まもん!」
「いやいやいやいやいやいや、なにやってんの!?」
「――まもんまもん流の修行でまもんまもん」
「まもんまもん流!?」
「まもん! まもんまもん流でまもんまもん!」
さまたんの口から歯ブラシが落ちる。
「なんで、そんなもんやり始めたんだよ?」
「このマモン、古より存在する大まもんまもん魔族でありながら由良夏樹に圧倒的な力量で敗北しまもんまもん。それは、このマモンには流派がなく、由良夏樹にはギャラクシー流があったからでまもんまもん」
「由良夏樹くんってギャラクシー流なの!? 確かにギャラクシー河童勇者って名乗っているけど、いや、その前にギャラクシー河童勇者ってなんだよ! ギャラクシーと勇者の間に河童を挟む理由がわからねえよ!」
さまたんは夏樹がギャラクシー流を受け継ぐいつる・ディロン・マルセー・ロットロット・ナイジェルマリー・赤星と接触し、ギャラクシー流を名乗るようになったことは知らない。
むしろ、青森にいながらギャラクシー流を知っているマモンのほうがおかしい。
「ゆえに、このマモン! まもんまもん流としてより一層高みにいくでまもんまもん!」
「いや、普通に戦えよ。基本スペックは高いんだから」
「シャラップまもん! あのアマイモンでさえ、長い時間を訓練に費やし由良夏樹と同等の力を手に入れていたというのにまもんまもん!」
「……アマイモンなぁ。あいつは頑張り屋さんだからなぁ。というか、今更だけど、魔族相手にガチンコ勝負して勝てる由良夏樹くんがおかしいんだよなぁ」
さまたんはアマイモンのこともガープのことも知っている。
夏樹が戦ったことも、だ。
何かとトラブルが多い子だ、と思う。
「お前がまもんまもん流を始めたのはわかったけどさ、なんで道着を着て正拳突きなの?」
「ノリと勢いでまもんまもん!」
「……あ、駄目だ。ツッコむの面倒くせー!」
正拳突きを続けて汗を流すマモンに、さまたんはツッコむことは諦めて家の中に入った。
その後、しばらく正拳突きを続けていたマモンだったが、
「飽きてしまいまもんまもん。やっぱり何かがまもんまもんと違うようですね」
「――お前、適当すぎだろ!」
どうやらまもんまもん流は失敗に終わったようだ。
――安定の青森だった。