軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

39「ツインテールって振り回したら武器になりそうじゃね?」①

夏樹に殴り飛ばされた黒服の男性は、背中から電柱に激突しくの字となった。

ずるずると地面に落ちてくると、ぴくりとも動かない。

しん、と静寂が広がった。

そんな静寂を破ったのは、静寂を作った夏樹自身だった。

「――何者だ!」

「いやいやいや、夏樹くん!? 殴る前に聞こうよ!?」

呆然と口をあけていた一登だが、すぐにはっとして夏樹を責めるように問う。

夏樹は困ったように頭をかいた。

「だって、敵じゃん。斬り殺さなかっただけ感謝してほしいんですけど」

「……そうなんだけどさ、そうなんだけどさ! 情報引き出すとか、あるでしょう!」

「――っ、その発想はなかった」

「どうして!?」

「みんなぶっ殺せば問題ないと思っていたんだ」

「あらやだ、怖い」

「それに」

「それに?」

「俺の異世界の経験だと途中で聞いてもいないのに勝手に情報吐いて命乞いする奴が出てくるから、わざわざ聞くまでもないかなーって」

「…………本当に夏樹くんの異世界転移って、ひどいね。あ、涙出ちゃう」

相変わらず、小出しにされる異世界で過ごした日々の情報が悲しすぎて一登が上を向く。

「ま、そんなわけで、俺たちに用事があるのならかかってこいや!」

夏樹が地面を蹴る。

「かかってこいって言った夏樹くんが仕掛けるんだ!?」

一登がびっくりしているが、先手必勝である。

攻撃が最大の防御であるゆえ、とりあえず叩きのめすことにした。

「死んだらごめんねー! 勇者チョップ!」

夏樹の蹴りがいつの間にか特殊警棒を構えていた黒服に刺さる。

特殊警棒が曲がり、蹴りを受けた身体から骨が砕ける音が響いた。

内臓までダメージがあったのだろう、黒服は口から血を吹き出して白目を剥き、そのまま横に蹴り飛ばされて近くにあった壁に激突して沈黙した。

「――チョップじゃないじゃん! キックじゃん!」

青春すみれが叫んだ。

夏樹の適当な攻撃を初見であるすみれには、突っ込まずにいられなかったようだ。

「よし、次! ギャラクシーエクスプロージョンまもんまもんデンジャラスフォーエバーマキシマムキック!」

それはそれは見事な右ストレートが、黒服女性の顔面に突き刺さった。

勢いを殺さず、そのまま地面に後頭部を叩きつけた。

地面に蜘蛛の巣状の罅が入り、黒服の女性が何度か痙攣して動かなくなる。

「はいはい、次はだーれーにーしーよーうーかーなー!」

「聞いてねえ! 聞いてねえよ、こんなの! ガキを攫うだけって聞いたのに、こんなモンスターが相手てぶじじゅろるむっ!?」

失礼なことを言った黒服の男性の股間を無言で蹴り上げる。

何かが潰れる不快な感触と、骨盤が砕ける感触が足に伝わってくる。

白目を剥き、股間から血尿を垂れ流した男は倒れることすらできず膝立ちとなったまま意識をなくしていた。

「こうなったら!」

夏樹と一番離れていた男が、後方にいた杏とすみれに向かい手を伸ばした。

だが、夏樹と一登はまったく心配しなかった。

経験は浅いが、杏にも力があり、すみれに至っては新たな神々だ。

「――お友達の杏には指一本触れさせないわ! ――ツイテール流奥義! 荒ぶりツインテール!」

すみれがツインテールの根本を握りしめると、まるで意志を持ったように毛が伸び男を拘束する。

そしてそのまま全身を砕いた。

「……そんな粗挽きウインナーみたいな技名って、だっさ!」

「あんたには負けるわよ!」

言うに事欠いて、夏樹はすみれのネーミングセンスを笑うも、反論された。

「いや、どっちもどっち」

「うん。どっちもどっちかな」

一登と杏の判定は厳しめだった。