作品タイトル不明
38「無粋なことはしてほしくないんじゃね?」
由良夏樹は、学校からとぼとぼと力なく歩いて帰路についていた。
一緒にいるのは、三原一登と綾川杏、そして青春の神こと青春すみれだ。
「すっごく疲れた。男子たちは俺と性癖語りたがるし、そんな光景を女子たちは汚物みたいに見るし!」
「ははは、災難だったね。でもほら、男子のクラスメイトと交流できたと思えばいいんじゃないかな?」
「……クラスメイトの斎藤くんは義理の母と義理の姉との関係に悩んでいるという感想が言いづらいカミングアウトされたんだけど、これ、良い交流かな!? 性癖の話の途中でぶちこまれたから、悩みなのか、性癖として言われたのかわかんなくて俺も吉岡くんもみんな黙っちゃったよ!」
「ごめん、わかんない」
斎藤くんのお話は、ディープな予感がしたので誰も深追いできなかった。
女子は視線で「もっと詳しく聞け!」と言っていたが、無理だった。
「というか、青春さんも一緒に帰るのはいいんだけど、家どこなの?」
「な、何よ! 私の家に押しかけて青春しようっていうの!?」
「……いえ、違います。ただ、新たな神々がどこに住むのか気になっただけです」
「それなら学校の神と一緒よ。今流行りのシェアハウスね!」
「シェアハウスって流行りなの?」
「さあ?」
「杏もわかんない」
どうも青春すみれとの会話は疲れるというか、振り回されてしまう。
「ねえねえ、青春さん」
杏が話しかけると、すみれはツインテールを靡かせて返事をする。
「なぁに? すみれでいいわよ」
「じゃあ、すみれちゃん。転校初日どうだった?」
「そうね、最初からクラスを間違えてしまったけど、みんないい子ね。話しかけてくれてたのしかったわ。これぞ青春って感じね。ただ、ほら、私って、青春の神であることを隠しているわけじゃない。人間として生きていくと決めたけど、後ろめたさがあるのよね」
「萌葱先生みたいにはっちゃけられないんだね」
「学校の神みたいな性格をしていたら楽だったんだけど……さすがにねぇ。だから、私の正体を知っている人たちと一緒にいた方が、気持ちが楽なのよ」
「そっかー。杏でよかったら、友達になりたいな。あ、でも、杏嫌われているから」
「そんなこと関係ないわ! 私の正体を知っても友達になってくれるなんて、嬉しいわ! 大歓迎よ! お願いします!」
「わーい! よろしくね、すみれちゃん。私のことも杏って呼んでね」
「う、うん。杏ちゃん!」
杏とすみれが両手を取り合って笑顔を浮かべた。
実に良い光景だ。
「いやぁ、いいですなぁ」
「青春ですねぇ」
「心が洗われるようですなぁ」
「本当ですねぇ」
夏樹と一登は少女たちの友情にほっこりしてしまう。
「――由良夏樹だな?」
「あん?」
友情の始まりを目の当たりにしていた夏樹たちに無粋な声がかかった。
愛想のかけれもなく、上からな不快な声だ。
威圧感を与えたいのかもしれないが、何も怖くもない。
「雇い主がお前を連れてくるように言っている。痛い目に遭いたくなけれ――ばっ!?」
無粋な声の主を夏樹はとりあえずぶん殴った。