軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

37「藪を突いてドラゴンじゃね?」

「さて、沙也加のことは置いておくとして」

「あまり置いておきたくないやつだが」

「かかか。七森の、些細なことだ。殺されぬだけマシだろう」

「そうかなぁ?」

源蔵は沙也加の凶行をとりあえず流すことにしたようだ。

「そろそろ連絡があるはずだが」

黒服のひとりの携帯がなった。

唯一、ズボンに手を突っ込んでいた物の懐から着信音が響く。

「よりによってこいつかよ。おい、佐渡」

「無理です。僕はロリババダークエルフ以外に触れたら死にます」

「……川崎、近くにいるから頼むわ」

「えー。いたずらしていいなら」

「……わかった」

「やったー!」

沙也加は喜び黒服のスーツからスマホを取り出し、千手に投げた。

受け取った千手が通話ボタンを推し、スピーカーにする。

「よう、待たせたな」

「――どうやら、俺が送った奴らは七森千手、お前に停止させられたようだな」

スピーカーの向こうで男が鼻を鳴らした。

傲慢な声が続く。

「降伏しろ。こちらには死の神がついている。死にたくはないだろう? 他の神を頼っても無駄だぜ、親父。死の神からは逃げられない」

「と、言っているが?」

「かかか。威勢がいいことを言うが、怖くて目の前に現れることもできぬ臆病者め。神に頼らず、自分の力でわしから家を奪えばいいものを」

「――そうやって強がりを言っていればいい!」

「吉座よ。まだ間に合う。不用意に敵を作るな。わしから家督を奪い、ビジネスをしたいことは知っているが、お前の商才ではいいように食い物にされて、乗っ取られて終わりだ。最悪の場合は、始末されるぞ?」

源蔵の言葉は、最後の忠告だった。

しかし、彼の息子――加座間吉座は聞く耳を持たなかった。

「ははははははっ! こっちには死の神がいる! 新たな神々がいる! 神を相手に誰が何をできる!?」

「それはお前も同じだ。神々を御すことなどできぬ。本来ならば、関わるべきではない」

「嫉妬か、親父? あんたは力、権力を求めて手に入れたかもしれないが、神とだけは接触できなかったもんなぁ?」

「確かに、神にお目通したかった。力に恋焦がれた以上、超常の存在である神には言葉にできない感情がある。――しかし、お前が利用している死の神は神ではない」

「はぁ!?」

「わしは古い人間なのでな。新たな神々を、神とは認めん」

電話の向こう側で、加座間吉座が息を飲むのが聞こえた。

源蔵は新たな神々を神と認めない。

それは、月読命をはじめ古き神々への想いがあるからだろう。

新たな神々の死の神を殺してほしいと月読に頼りたい源蔵にとって、至極当然のことだ。

「七森の。わしはもういい。話すだけ無駄だ」

「わかった。おい、加座間吉座」

「七森千手か。分家筋にもなれん愛人風情の子が気安く声をかけるなと言いたいところだが、いいだろう。俺は寛容だから話を聞いてやる」

「そりゃどうも」

千手に対しての暴言に、祐介が憤りを露わにしようとしたが、他ならぬ千手自身が止めた。

この手の輩は相手にするだけ無駄だと経験で知っているのだ。

「あんたが加座間家を乗っ取ってビジネスをしようと俺は興味がないんだが、許せねえと怒っている奴も何人かいてな」

「はっ」

「その中には、あんたじゃ想像できないぶっ飛んだ奴もいるんだぜ。新たな神々を味方にしたつもりなんだろうが、結果として敵も増やしたことを自覚してくれや」

「負け犬の遠吠えにしか聞こえん。だが、いいのか?」

「あん?」

何か意味ありげな言葉に、千手が訝しむ。

電話越しに吉座が笑った。

「由良、夏樹だったな。なぜ中学生がお前たちと行動を共にしているのかわからんが、そっちがその気ならわかるな?」

「――ちょ」

千手と祐介が顔を真っ青にする。

「雇った連中を由良夏樹、三原一登のもとに向かわせた。捕まえてこいと命令を出して、な。さて、俺が何をしたのか理解してもらった上で、交渉とい」

千手は通話を途中で切った。

「――加座間家終了のお知らせ」