作品タイトル不明
36「加座間家が動き出すんじゃね?」②
「うわぁ、すっごい! みんな止まっちゃったんですけど。あ、本当にひとりだけポジショニングを直している人いる!」
ショタエルフ侍らせてえさん、こと川崎沙也加は容赦無くズボンに手を突っ込んでいる男性をスマホで撮影した。
「ねえねえ、七森鬼っ子大好きさん」
「おい、ふざけんな。なんて名前で呼びやがる!」
「この人たちって、何もかも止まっているの?」
「聞けよ!」
「はいはい、ごめんなさい。鬼っ子大好きさん」
「普通に七森さんって言えよ。なんでそっちを消しちゃったんだよ!」
沙也加の独自のペースについていけず、千手が拳を握りめて震わせる。
見かねた加座間源蔵が顎鬚を撫でながら、助けを出した。
「かかか。七森の。沙也加は始終このような感じだ。はいはい、と流しておくのが吉だ」
「はいはい、と流せねえこと言われているんだけどなぁ」
「そうだよ、沙也加さん! 千手さんは鬼っ子が大好き以上に、とらぴーが大好きなだから!」
「お前も黙っていやがれ、佐渡!」
「――痛いっ!」
鬱陶しいのがふたりに増えたため、我慢できずに悠介の脳天に拳を落とした。
蹲る祐介を無視して、千手は角砂糖をいくつかまとめて口の中に放り投げると、音を立てて噛み潰す。
「……こいつらは一時間もすれば動けるくらいの力で停止させたから、目も見えるし耳も聞こえる。意識だってちゃんとある」
「なるほど。幽体離脱している感じかな?」
「いや、それはわかんねえけど。それを聞いて何を――って、おい、なんで躊躇なくおっさんのズボンをずらしているんだよ!?」
「え? この人たちって私たちによからぬことをしようとしたんだから、ちゃんと制裁しないと」
沙也加は男女問わずズボンを降ろすと、容赦無く写真を撮っていく。
「あーあー、聞こえますかー。次に、私たちの前に顔を見せたらネットにばら撒くから。そのくらいの覚悟してるんだよね?」
「……容赦なさすぎて怖い」
「……この娘、本当に表の人間か?」
「……沙也加さんは人外っ子以外には容赦がないから」
「じゃあいままでずっと容赦なく生きてきたってことじゃねえか!」
「あ、友達には優しいよ!」
「友達にも容赦なかったら怖すぎだよ!」
沙也加の凶行に千手たちはただただ震えた。
表とか裏とか関係なく、容赦がない人間が一番怖いと思い知ったのだ。
「そうだ! せっかく動けないんだから、男性と男性のサンドイッチを」
「もうやめてあげてぇ! そこまでしなくてもいいじゃない!」
あまりにも容赦がない沙也加に、襲われた側の千手が泣きながら止めに入った。