軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

35「加座間家が動き出すんじゃね?」①

「――千手さん」

「なんだ、佐渡」

「僕ね、尊厳を踏み躙られたことはあるし、酷い目にもたくさんあったよ。それでも最後には幸せを手に入れたから良しと思っていたんだけど、僕にはまだすべきことがあったようだ。きっとゴッドもまだ僕に幸せになるのは早いとおっしゃっている、そう受け取ったよ」

遠くから「いえ、そんなことは微塵も言っていないんですが」と千手には聞こえたが無視することにした。

「つまりなんだ」

恐る恐る祐介に視線を向けると、彼は般若を通り越して真蛇みたいな顔をしていた。

(あ、駄目だ。やべぇ、煙草が吸いてえ。なんで俺だけこんなストレスを……毛が抜けそう)

「加座間家は僕が滅ぼす」

「由良みたいなこと言ってんじゃねえよ。加座間のジジィ、あんたも自分の息子くらい止めろ! そのくらいの力はあるだろう!」

「かかか。ない!」

「ねえのかよ! 自信もって言うなよ! 悲しくないの!?」

加座間家を盛り立ててきた当主が、息子に抵抗する力がないと言うのは嘘くさく聞こえる。

「まず死の神がいる以上、脆弱な人間では逆立ちしても勝てぬよ」「あんたの側近は……いるみたいだが、他の人間はどうしたんだ?」

「加座間家は小さな一族だ。分家筋はあっても、本家と変わらん。ただ、一応そうやって分けているだけだ。そそもそも、分家を足しても数える程度しかいない」

「普段、荒事はどうしているんだ?」

「外部の人間を雇っている。金だけはあるのでな」

「要は、金払いの良い息子の方に雇った奴らを引き抜かれたってことか」

「かかか。あ奴らなどいてもいなくても変わらぬよ……と言いたいが、数の暴力には勝てん。そこで、沙也加から佐渡祐介の人となりを聞いて信用できると思い会いにきたのだ」

未だ鬼もびっくりな形相をしている祐介と、なぜか祐介に信用と信頼を抱いている沙也加と源蔵を見比べた。

「……え? 佐渡の人となりを聞いたんだよな? その上で、信用できるとか、どうしてだよ!? ボケてるだろ、あんた!」

「――仲間に容赦がない。かかか」

「祐介くんって相変わらず、仲良くなると辛辣に言われるの好きだよね。さすがドM!」

やはり凄まじい形相をしたままの祐介から放たれる圧が鬱陶しいので千手が軽くこづく。

「ちょっと、千手さん。夏樹くんを見習ってシリアスな顔をしているのに!」

「由良の真似なんかするな! あとあいつはシリアスじゃねえ、ギャグとバイオレンス担当だ!」

「――僕は人外娘担当さ!」

「知ってるよ!」

「……でも実は、人外っ子なら男の子もいけるのさ」

「知るか!」

「ああ、もう面倒臭え。申し訳ないが、月詠様に連絡を――」

スマホを取り出そうとして、動きを止めた。

いつの間にか、黒服に身を包んだ十人ほどの男女が千手たちを取り囲んでいた。

「……ジジィ、こうなることわかっていて俺たちに接触してきただろ」

「かかか。すまんな。こちらも余裕がないのでな。利用できるものならなんでも利用させてもらおうと思ったのだ。それに、七森の。お前さんたちが敵として認識すべきはわしではなく、息子たちだ。なので協力し、良い関係を築こうではないか」

「勝手なこと言ってくれる!」

千手も源蔵も荒事には慣れているので今更動揺はしない。

祐介もそれなりの場数をくぐり抜けてきたので、緊張はしているようだが、大丈夫だろう。

沙也加だけが、はっきりとした怯えを見せていたが源蔵が庇うように車椅子を移動させたので、いざと言う時は守ってくれるはずだ。

――しかし、そもそも守る必要はない。

黒服たちがいっせいに懐に手を入れた。

「――停マレ」

サングラスをずらし、露わになった停止の魔眼によって黒服たち「だけ」が全て動きを停めた。