作品タイトル不明
31「加座間家の目的じゃね?」①
――死の神。
新たな神々である「死の神」が加座間家にいることは、事前に把握していた。
水無月俊平の擬似的な不死が死の神によってもたらされていることを聞いていたため、千手は特別驚くことはしない。
しかし、死の神と繋がっているはずの加座間家当主である加座間源蔵は「死の神」を殺して欲しいと願った。
「――話の辻褄が合わねえだろ。あんたら、死の神と組んで何かしようとしているだろ。水無月俊平を不死にしようとしたことは知っているぜ?」
「無論、否定はしない。加座間家の人間が、水無月俊平を利用したことは認めよう」
「……加座間家の人が、ってまるであんたは関わっていないみたいな言い方じゃねえか」
「その通りだ。わしの時間は残り少ないというのに、愚か者に付き合う時間などない。自分のことを星と言って歌を歌い出す姿は、死の神よりも恐ろしく、関わってはいかんものだとわかりやすい」
「俺も関わりたくねえな!」
成り行きを見守っていた祐介と沙也加も水無月俊平の痛々しさに「いたたたた」と悶絶している。
「あの愚か者を利用したのは、愚息だ」
「……後継者が馬鹿なパターンだったか。面倒臭え」
「そういうな、七森の。お前の家も後継者が愚か者ではないか」
「愚か者に愚か者って言ってやるな。英智だって一生懸命生きているんだぞ!」
「……わしより酷いこと言ってる自覚しようね?」
「急に優しく諭すんじゃねえよ!」
面倒くさいことに、七森家当主康弘の妻である久乃の妹が嫁いだ先が加座間家だ。
あまり興味がないので、うっすらとしか覚えていないが、結婚相手の名が吉座だった気がする。
「言っておくが、孫の桐生とキリエは七森家の後継者とは従兄弟の関係だ」
「やっぱり面倒臭え。俺は血が繋がってねえからセーフってことでひとつよろしく」
「かかか。七森も外で作った子が一番大事ゆえに放置をしていたというのに、一番才能があるとは皮肉なことだ」
「そうかよ」
「お前さんにとってはいい迷惑なのかも知れぬが、七森を名乗っている以上七森だ」
「ちっ、仕事するのに便利だから名乗っていたんだがな」
「そう言うが、最近は、父親と仲良くやっているようではないか。婚約者を紹介するほどだと聞いているが」
「誤情報! 誤情報だ!」
「恥ずかしがらずともよい。まあ、その話は良いだろう」
「いや、良くないんだが!」
祐介と沙也加がひそひそと「千手さんは虎童子という鬼と結婚を前提に付き合っているのに恥ずかしがってしまうツンデレさんなんだ」「鬼と結婚なんて、けしからんわね。ツンデレ受け、ね」「えっと、千手さんが受けってことはないと思うんだけど」「甘いわね。ああ言う元ヤンキーでしたみたいな男ほどウケなのよ」「ほえー、深い」「でしょう?」話している声が聞こえ、千手は震えた。
怒りで身体が震えてならない。
許されるのであれば、この場でふたりをしばきまわしたい。
「……沙也加は放っておけ。いつもああ、だ」
「それはそれで問題だろう」
「安心するといい。慣れる」
「慣れちゃダメだろうに!」
「おじいちゃん、ナウなヤングな子はわかんない」
「おい、やめろ。キャラ変えてくるんじゃねえよ。あとナウなヤングとか今、言わねえから!」
千手はなんとか話を軌道修正しようと試みた。
「それで、あんたの息子がなんで死の神と接触しているだよ! そこを知りたいんだ、俺たちは!」
「七森千手。まだ若いお前さんにはわからぬかもしれんが、権力に取り憑かれた俗物が願うことなどひとつだけよの」
「……なんだって言うんだ?」
「――不死、じゃよ」