作品タイトル不明
30「もしかして話がちゃんとできる系じゃね?」②
「若いな。動揺が出ているぞ。必死に隠そうとするから、逆にわかってしまうのだ」
「……ああ、そうかい」
「そう怖い顔をするな。おいぼれにはもっと優しくするものだぞ?」
「何がおいぼれだ。てめぇはまだ三十年くらい生きるだろう。人外の血を取り入れすぎだ」
「――ほう。さすが名門七森家の人間だ。見ただけでわかるか?」
「目には自信があってね」
千手は動揺がバレていると指摘されながらも、肩を竦めて流す。
口で勝てないのはわかっている。
真正面から口で相手にしようとは思っていない。
(面倒臭えことになったな。月読様のことを本当に気づいているのかどうかさえわかねえ。このジジィ、にこにこ笑っていやがるが感情が全く読めねえ)
いっそ祐介と沙也加に話を振って、この場をめちゃくちゃにしてしまおうかとも考える。
「七森の。警戒をする必要はない。わしはこんな見てくれだ。誤解を招きやすいことは知っている。一族も秘密主義だからな。外からどう思われているのかも知っている。その上で、言う。警戒する必要はない」
「上から言ってくれるじゃねえか」
「上も下もない。七森千手とわしは対等だ。わしはお前を侮らん。軽く見ることもせん。だからこそ、お願いしたい。月読命様にお目通りをお願いしたい」
「…………」
千手は無言で答える。
「七森の。お前はわしが月読命様の存在をきちんと掴んでいるのか、それとも適当に言っているのか悩んでいるようだが、無言を貫いていると「いる」と言っているようなものだ。こう言う場面では、「いない」とはっきり言った方が良い。今後の糧とするといい」
「そりゃどうも。んで、どうやって知った?」
確実に、加座間源蔵に月読命の存在がバレている。
変に誤魔化すのであれば、加座間家の目的を吐かせた方がいいと考えた。
千手の問いかけに、源蔵が髭を撫でて言葉を紡ぐ。
「加座間家は、いや、わしは情報を常に集めている。向島市にも、知り合いは多く、金で情報を買わせてもらっているのだ」
「金、ね」
「霊能力者ではない。一般人だ。不思議なことが起きたら、何かおかしなことがあったら、情報を買おう。そう約束している者は多い。一応、わしは創作を趣味にしている老人となっているのでな。取材費のようなものだと思っているだろう」
一般人と霊能力者では、「何か」に対しての考え方が違う。
霊能力者や関係者は「何か」が起きても察する。
一般人は超常の存在を知らないため、「何か」を理解できない。
ゆえに、話をしてしまう。
友人や知人に「こんなことがあったんだ」と。
霊能力者は言わない。
たったそれだけではあるが、情報を集めている者からすれば小さな情報が大きな情報となることもある。
「わしは情報を買い、集め、つなげた。向島市には、我々が想像できない存在がいる。その中に、月読命様がいらっしゃる、と」
「それで、月読命様にお会いして何をしたい?」
「――死の神を殺してほしい」