作品タイトル不明
24「青春って春雨と似てね?」
「じゃ、じゃあ、青春ってなに? どんなことをしたら青春なの?」
ふにゃり、と泣きそうな顔をした青春すみれが夏樹たちに助けを求めるように問いかける。
「あー」
「うー」
「むー」
しかし、夏樹、一登、杏には「青春とはなにか」という問いに答えることはできない。
なぜなら、三人とも青春らしいことを特にしていないからだ。
「……えっと、あれだよ、あれ、あれ!」
「そうそう! あれだね!」
「うん! あれだもん!」
「ちょ、抽象的に言わないでよ! 具体的に教えて!」
「…………」
「…………」
「…………」
「なんで沈黙しちゃうの!? 青春ってそんなに答えにくいことなの!?」
沈黙してしまう夏樹たちに、すみれが悲鳴をあげた。
その間にも夏樹は「青春とはなにか」と考える。
思い返せば、青春がどんなものなのかわからない。
部活に入っているわけではない。
異世界で殺伐とした日々を送っていたこともだが、異世界召喚前は自称幼馴染みを名乗る変な男に付き纏われ、厄介ごとに巻き込まれていた。
他にも、不良や怖い自由業の方々に絡まれては、二度と馬鹿なことができないようにお仕置きする日々。
(あ、俺、青春送ってなくね?)
夏樹は絶望した。
今は亡き絶望の神が喜びそうな絶望だった。
(そんなことはない! 思い出せ、由良夏樹! 青春皆無なんてことはないでしょう! 中学生だぞ!)
異世界で数年過ごしたせいで薄れいていた記憶を必死に思い出す。
(そうだ。あれは、去年の暑い夏の日のことだった――)
一登とふたりで海に行き、海水浴を楽しんだ。
一登とふたりでカブトムシを取りに行き。
一登とふたりで川の上流で釣りをした。海でも釣りをした。
一登とお泊まり会をした。
「――――あ」
夏樹は気づいてしまった。
「――俺の青春って一登のことだったんだね」
夏樹の隣には常に一登がいてくれた。
「……俺の青春も確かに夏樹くんと過ごした記憶しかないけど。なんだか言い方が多方面に誤解を受けそうな感じがするから、ちょっと訂正しようか?」
「そんな! 俺との思い出を! 口にはできないことだってたくさんしたのに!」
「やめて!? 確かに口にはできないことをたくさんしたけど、それって夏樹くんがかなりグレーゾーンなことをやらかしたってだけだからね! 俺がなんかしたわけでもされたわけでもないからね!」
「――ごくり」
「ちょっと!? なんで青春すみれさんは生唾を飲み込んだの!?」
「え? なんのこと? すみれちゃん、何もしらないよ?」
「キャラ変わってるよ!? わざとらしく変わってるよ! 絶対に変な想像してるでしょう!?」
「し、してないわよ! そ、そんな、幼馴染みの夏の過ちなんて想像してないからね!」
「とても想像してるぅ! 誰か千手さんを呼んできてください! 間に合わなくなる前に、千手さんを!」
夏の思い出に浸る夏樹。
よからぬ想像をする青春すみれ。
誤解を必死に解こうとする一登。
そして、
「あ、杏……青春って何もしてない! 何もしていないよ!?」
まったく青春をした記憶がなかった杏は泣きそうになっていた。
――新たな神々が加わっても夏樹たちの日常は特に変わらなかった。