作品タイトル不明
23「転校生の正体じゃね?」②
「――その通りよっ!」
ばんっ、と音を立てて屋上に現れたのは、黒髪をツインテールにした小柄な少女――青春すみれだった。
「こんにちは! お察しの通り、私は新たな神々と呼ばれる存在、青春の神こと青春すみれよ!」
「当たってたぁああああああああああああああああ!」
「すっげぇええええええええええええええええええ!」
「やったー!」
すみれが「青春の神」を名乗ったことで、夏樹と一登が杏が見事言い当てていたことに感動を覚え、彼女を胴上げする。
「――え? 何このノリ? これが令和の青春なの?」
青春の神が困惑して胴上げを続ける夏樹たちを唖然として見ていた。
しばらくして満足した夏樹と一登と、かなり高いところまで胴上げされて驚いてしまった杏が弁当箱を片付けると、「どうぞ」とすみれに座るように促した。
「あ、ありがとう?」
ノリについていけずに困惑気味にお礼を言うと、おずおずとレジャーシートに座った。
「それで、青春の神さんがどうしたの?」
「とりあえず、朝はごめんなさい! 月読と学校の神にも怒られたわ。私の知る青春と今の青春は少し違うようね」
「……謝ってもらえたのならいいんだけど、そもそもあの出会いは青春なんだろうか? 冤罪で苦しむ人を生み出しかけたんだけど」
「それもごめんね。私って、ずっと俗世から離れていたから」
「ほーん。どこにいたの?」
「廃校」
「それって怖くない!?」
廃校に住むとか恐ろしいと言う夏樹に、一登が心底驚いた顔をした。
「……呪いの家に平気で入るのに」
「呪いの家は木造じゃん! 一軒家じゃん! 最悪どうにでもなるよ! でもさ、学校の校舎はちょっと難しいよねぇ」
「夏樹くんの方がやばいよ!?」
一登は夏樹の「怖い」の基準がよくわからなかった。
「まあまあ、俺の話はいいとして、青春さんの話をしよう。とりあえず、戦うなら表に出ろよ」
「……もう表じゃない」
「…………くっ、これが青春の神の力か! 心にダメージが」
「誰がどう見ても自爆じゃん」
「うん。自爆だね」
急に真顔になった夏樹だったが、言葉選びを間違えたせいで恥ずかしいことになった。
顔を覆ってしまう夏樹を、一登と杏が可哀想なものでも見るような目を向ける。
青春の神も「……こういう感じの子なのね」と夏樹のことをわかったようだ。
「ごほんっ! お、俺の話はいいとして、青春さんの目的を教えてもらおうか。月読先生の知り合いなら特に悪さをすることはないだろうけど、こっちも新たな神々には迷惑かけられているからね。はっきりさせておいてくれると助かる」
「もちろんよ。最初に言っておくけど、私は新たな神々だけど、あいつらとは関係ないわ。学校の子供たちが過ごした青春の想いから生まれた存在だけど、自分のことを神だなんて思ったことはないわ。ただジャンル的に新たな神々らしいから、そう言っているだけ」
「ジャンルて」
「例えよ、例え。それで、私の目的だけど、ひとりの人間の生徒として学校に通って青春することよ。今日は転校初日でテンション高くなっちゃって。迷惑をかけてごめんね」
「……そういう理由なら、はい。許すんでもう謝らなくていいです」
「ありがと。お詫びと言ったら何だけど」
「うん?」
すみれが立ち上がると両手をスカートの中に突っ込んだ。
「ちょ」
「なん」
「だめだめだめー!」
夏樹と一登が驚きながらも視線を動かさず、杏が慌ててすみれの腕を掴んだ。
「なんでなんで!? 青春の神様はなんでスカートの中に手を突っ込んだの!? 杏、わかんない!」
「……お詫びの品としてパンツをあげようと思って」
「どうしてそうなるの!?」
「男の子はパンツが好きでしょう?」
「そうかもしれないけど! いろいろだめだよ! 脱いだ後どうするの!?」
「ノーパンで過ごす予定だけど!」
「だーめー! というか、なんでそんな発想になるの!?」
「私がいた学校が廃校になる前、男子生徒が読んでいた漫画にそう言う展開があったの。つまり青春よね?」
「杏、そういうのよくわからないけど、それは絶対に青春じゃないと思います!」
「――っ、そんな、馬鹿な」
絶句する青春の神に、杏だけではなく、夏樹と一登が心底疲れた顔をした。
「――青春の神め、かなりできると見た」
屋上をのぞいていた学校の神こと萌乃萌葱は、ライバルの出現に動揺を隠せずにいた。