軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

22「転校生の正体じゃね?」①

――昼休み。

危うく冤罪をかけられてしまうところだった由良夏樹は午前中の授業を終えて、昼休みを迎えていた。

「……なんというか、災難だったね」

「どんまい、お兄ちゃん」

「うん。ありがとう」

お弁当を食べながら、一登と杏にホームルームの出来事を話すと、苦笑さえされることなく同情されてしまった。

ふたりがそっとおかずを一品くれたことが、心に響く。

「可愛い転校生が来たってみんなが言っていたけど、その人のことだったんだ」

「青春さんって、不思議な苗字だね。杏、初めて聞いたかな」

「確かに。みんなが顔を見にいくって騒いでいたから迷惑をかけていないといいんだけど」

どうやら青春すみれのことは後輩たちにも伝わっているようだ。

「かわいい?」

夏樹は後輩ふたりの会話に首を傾げた。

よくよく考えると、すみれに冤罪を押し付けられそうで顔をちゃんと見ていなかった。

いや、見ていたとしても記憶できた余裕があったかどうか悩ましい。

「可愛いらしいよ?」

「女の子たちも噂してたよ」

「へー。じゃあ、きっと今頃……月読先生が、こらー、男子! 転校生見に来てないでとっとと自分のクラスに戻れーって怒っているんだろうな」

「……お兄ちゃん、それ、古くない?」

「え?」

「古いよ、夏樹くん。パンを咥えて出会い頭にぶつかってパンツ見ちゃうくらい古いよ」

「……え? だって、お母さんの持っている本には」

「あー、なんというか、言い方によっては怒られそうだけど、春子おばさんが集めている本って最近のじゃないよ。きっと、学生時代のだと思う」

「――じゃあ、弥生時代じゃん!」

「それ春子おばさんに言ったら間違いなく八つ裂きにされると思うから絶対に言っちゃダメだからね!」

きっとツッコミの勇者七森千手がこの場にいたら「なんで弥生時代なんだよ! 昭和でいいだろ! つーか、弥生時代に漫画なんてねーよ! 少なくとも本にはなってねえだろ! そもそも、このツッコミが意味わかんねえよ!」と言ってくれたはずだ。

しかし、彼は今頃、虎童子とイチャつきながらおしゃれなレストランでランチをしているはずだ。

「そっか、古かったんだ。ちょっとショック」

「個人的に言わせてもらうと、フランスパンを一本縦に咥えてぶつかっちゃうのは古いを通り越して新しい気がするけどね。顎の力強いね、とか歯は大丈夫とか気になっちゃうよ!」

「……杏、あまり考えたくないんだけど、新たな神々とかだったりしないかなぁ? えっと、ほら、青春の神とか!」

杏が閃いたと言ってみせるが、夏樹と一登はさすがにそれはないと否定した。

「いやいや、杏さん。杏さんや。さすがにそんなコッテコテな神はいないでしょうよ!」

「そうだよ、杏。いくらなんでも青春の神って。どんな神様なのか想像もできないよ」

「じゃあ、何の神なの?」

「そうだなぁ。――はっ、ツンデレの神とか!」

「それ! それそれ! 最初の出会いがよくなかったからツンケンしちゃうけど、きっとお兄ちゃんが子犬を拾う姿を見てときめいて急接近するんだよ!」

「――マジか。子犬さん拾わないとダメか。河童さんのお皿に水やりじゃダメかな?」

「うーん、多分平気だと思う」

「なら問題ないな!」

いえーい、と夏樹と杏がハイタッチした。

「俺にはこの似たもの兄妹のやり取りの意味がわからないよ!? ツンデレの神ってなに!? あとなんか話の展開的にデレさせる気満々じゃん!? そもそも新たな神々かどうかもわからないし!」

血の繋がりはないはずなのに、なぜこうも息が合うのか。

一登は不思議でならない。

数日前まで、蛇蝎の如く杏のことを嫌っていた夏樹を知っているので、この変化は幼馴染みとして嬉しくは思うが、落差が激しすぎるのだ。

「え? 一登さ、あの子は新たな神々だよ」

「一登? あの子、間違いなく神様だよ」

「――だからなんで!? あれ? 真面目に言っているの? 気づかなかったの俺だけなの!?」

驚く一登の問いかけに、兄と妹は真剣は特にしなかったが、肯定するように頷いた。