作品タイトル不明
21「月読先生の指導じゃね?」
――HRが終わった後の職員室にて、月読命は転校生青春すみれと学校の神こと萌乃萌葱を前に大きなため息をついていた。
「……初日から絶好調ですね、青春すみれさん。いえ、青春の神と言うべきでしょうか?」
「ご、ごめんなさい」
職員室の一角で、テーブルを挟んで向かい合う月読と、すみれ、萌葱。
呆れが混ざった声を出す月読に、すみれは肩を落として項垂れていた。
「すまない、月読先生。時代はもう令和であるので青春をアップデートするように言っておいたんだが」
「……もしかして私が怒っている理由を勘違いしていませんか?」
「ち、違うのか?」
「違います!」
反射的に大きな声を出してしまった月読は、一度咳払いをして冷静さを取り戻す。
コーヒーを啜り、ゆっくり話し始めた。
「萌葱先生が知り合いの青春の神が居場所がなくて困っていると相談してきたので、受け入れることにしました」
「月読命の寛大さには感謝している」
「居場所をなくした神の辛さは知っているつもりです。それが新たな神々であっても、です」
萌乃萌葱が学校の神として各地を彷徨っているときに、青春の神と出会った。
青春の神がいた学校にあったのが、現在中学校に聳え立つ「伝説の木」だ。
廃校となってしまい、朽ち果てた学校の敷地の中に枯れずにずっと在り続けていたのは、青春の神が面倒を見ていたからでもあった。
「伝説の木」を貰い受ける代わりに、居場所がなくなって久しい青春の神の居場所をなんとかしようと萌葱は月読に相談したのだ。
結果、青春の神は青春すみれとして「人として学校に通うこと」を願った。
ずっと子供たちを見守ってきた青春の神は、人々と共に青春を送ることを夢見ていた。
しかし、学校の神と違い、青春の神は人の中に加わっていこうとは思わなかった。
これは考え方の違いだ。
青春の神は、人々の生活に「神は必要ない」と考え、見守るに徹した。
だが、時代が移り変わり、子供が減り、青春の神がいた学校も廃校になった。
そのときになって初めて、「人々と触れ合いたかった」と後悔が押し寄せてきたのだ。
そんな折、学校の神と再会し、向島市に誘ってもらったことで願いを叶えることができた。
「はしゃいじゃってすみません」
「気持ちはわからないわけではないので、そこを責めるつもりはありません。しかし、関わったら色々と大変な子がいるとリストを渡しましたよね?」
「うん」
「人として暮らすのであれば、きちんと暮らしてほしいと思うのが私の願いです。まあ、萌葱先生のようにはっちゃけられたら困ると言うのもありますがね。ですから、関わらない方がいい生徒リストを作ったのですが……なぜ、ファーストコンタクトがリストの上位三名なんでしょうね!?」
由良夏樹、三原一登、綾川杏。
この三人は、大事な生徒ではあるが、関わったら「普通」の生活はできない可能性が高い生徒でもある。
月読も申し訳ないと思っているが、夏樹たちは何かとトラブルに愛されている。
そこに青春の神が関わるのを、良しとしないのだ。
(学校の神もそうですけど、青春の神も善性の神です。子供たちを見守り続けた守護神でもある。そんな神が、夏樹くんたちに何かあったらその身を犠牲にしてでも守ろうとしてしまうのは至極当然のこと)
「わ、私はそんなリストもらっていないんだが!?」
「……あなたはむしろ率先してリストの上位から接触するでしょう!」
「………………」
「その沈黙が答えですよ! あなたもあなたで面倒ですね! 教師になったんですから、生徒のお手本になるようにしてください! 青春の神、いえ、青春すみれさん。まずはゆっくりと人としてどう生きるのかを考え、模索してください。いろいろ苦言しましたが、私はただあなたに楽しんでほしい。それだけです」
「ありがとう、月読先生。あの子にも謝らないと。お詫びにパンツを渡せば許してくれるかな?」
「だーかーらー、関わらなくていいんですって! そのためにクラスも別にしたんですから!?」
月読はきっと青春の神にも苦労させられる。
そう確信した。