作品タイトル不明
25「知らない間に青春がアオハルになってたんじゃね?」
「待て待て待てぃ!」
どかんっ、と屋上の重い扉を蹴り壊して学校の神こと萌乃萌葱が芋ジャー装備で現れた。
「青春の話をするのに、私を除け者にするとは言語道断! 学校の神だぞ! 青春の神よりも青春に詳しい! というか、青春とは学校の領域だ! つまり、私の方が格上!」
「ああん? 何言ってるの、あんた。ツインテールで締め殺すわよ?」
格下扱いされた青春の神こと青春すみれが、低い声を出して萌葱と睨み合う。
新たな神々にここで喧嘩されてはたまったものではないので、夏樹たちは止めた。
「まあまあ、喧嘩はよくないよ。なっちゃん平和主義だから、そういうのはね」
「そうそう、喧嘩はよくな――え?」
「うん! 喧嘩はやめ――え?」
「おいこら、なんでお前らは信じられないみたいに目をこれでもかって見開いて俺のこと見るのかな? 何がそんなに驚いたのかな?」
「そ、そんなことないよー」
「そうだよー」
棒読みで誤魔化す一登と杏に不満を抱くものの、今、追求してもぐだぐだになると思ったので、夏樹は堪えた。
日頃から、謂れもない中傷には慣れている。
今日だって、青春すみれのせいで評判がガタ落ちだ。
「とりあえず、座って座って。あまり暴れたら殺さないといけないからさ」
「夏樹くん、そういうところだよ!」
「お兄ちゃん、そういうところだと思う!」
「あれー? でもさ、話し合えないなら殺すしかないじゃない?」
あまりにも危険極まりない発想の夏樹に、一登と杏は口を噤んでしまった。
異世界でどのような経験をするとこうなってしまうのか。
異世界での日々は少し聞いているが、詳細を語りたがらない夏樹の理由を少し垣間見た気がした一登と杏だった。
「はいはい、お座り」
「うむ」
「仕方がないわね」
萌葱とすみれは渋々とレジャーシートに座った。
「しかし、こうやって青春の神と学校の屋上で一緒に過ごす日が来るとは思わなかった」
「そうね。私も同じよ。あんたはフラフラしていたし、私は昔の思い出に縋って動かなかったしね。まさか、伝説の木を移植したいからくれ、なんて言って会いに来るとは夢にも思わなかったけどね」
「あれ!? あの伝説の木って青春さんのなの!?」
「私のってわけじゃないわよ。私が最後に見守っていた学校が廃校になっちゃったんだけど、一応、面倒は見ていたのよ。今でも思い出すわ。初々しい生徒たちが告白するのよ。私は頑張れって応援していたわ。時々、生徒が教師に告白する光景を見るとドキドキがすごかったわ。保健室の先生は強かったわねぇ」
「ちゃんと伝説の木だった! すっげ! というか、保健室の先生の話を詳しく!」
「くっ、やはり保健室の先生か! いまから月読先生に直談判して」
「萌葱先生はもうそういうのいいから!」
夏樹だけではない。
一登も杏も、すみれが目撃した伝説の木の下で起きた告白とその出来事に興味津々だ。
「まさか、あの時の男の子がこの中学校で校長先生とか、さすがにおったまげたわ」
「なにそれ詳しく!」
「詳細をお願いします!」
「詳しく聞かせてください!」
「ふふん、仕方ないわね!」
当時を思い出すように、青春すみれは饒舌に語った。
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「ちなみに、萌葱先生の青春ってどんな?」
「無論! 教師と生徒の禁断の恋!」
「はい、解散!」
「そんな馬鹿な!」