軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

14「ビュッフェとバイキングの違いがわからないんじゃね?」

ホテルに戻った円は、荷物を部屋に置くと兄東雲と茨木童子、星熊童子、熊童子と一緒に夕食に向かった。

ホテルはビュッフェ形式だ。

京都では和食が多かったので、円は自然と洋食を選んでしまう。

東雲の皿は色とりどりだ。バランスよく食べた後に、必ず好物のカレーを食べている。

茨木童子は最初こそ、猫を被って東雲のようにバランスよく食事を選んでいたが、無理があったのだろう。今は魚を中心にしている。肉は好きだが魚の方が好きらしいのは意外だった。

星熊童子は見た目がおしゃれな料理を「ハイカラ」と喜んでいろいろ挑戦している。

熊童子は、野菜を食べつつ、トーストにはちみつを塗って食べている。一度、誤ってメイプルシロップを口にしてしまった時は衝撃が走ったような顔をして、以後、はちみつとメイプルシロップを交互に食べていた。

「……それで、兄貴。向島市での拠点は見つかったん?」

「なかなか見つからんのよ。良い物件はあるんやけど、……大所帯やからねぇ」

「茨木童子は仕方がないとして、星熊と熊も一緒に住むんか? 京都帰ってええんやで」

異世界への殴り込みの助っ人も無事に終わった。

しばらく京都はうんざりや、と言っている東雲だが、茨木童子と生活するために向島から離れない方がいいと思っているようだ。

茨木童子が京都に戻ると面倒もある。茨木童子も東雲がいればどこでもいいようで、京都に執着はないらしい。

円は夏樹と一緒にいたいという思いもあるが、向島にいることで自分に経験を積ませて強くなりたいという思いもあった。

なによりも夏樹の力になりたかったのだ。

「ひでえこと言うなよ! せっかく京都から堂々とでられたんだ! 一世紀くらいは戻らねえぞ!」

「べあべあ!」

「ほら、熊童子だって、そもそも円の幼馴染みが家をぶっ壊したから京都に帰っても住む場所がないって抗議してるじゃねえか!」

「べあべあにそんな長文なお気持ち込められてたん!?」

「べあ!」

熊童子の言うように、彼女たちの住まいである裏京都の屋敷は夏樹が破壊してしまった。

戦いのせいなので仕方がないのだが、確かに彼女たちの住まいがなくなっているのは事実だ。

「虎童子の奴はちゃっかり七森千手の家で生活しているし。今度携帯電話買ってもらうらしいぞ! ちらっ、ちらっ」

「べぁっ、べあべあっ」

「あ、今回はわかるで。ちらちら言っとるだけやろ」

「クイズじゃねえよ! 俺たちも携帯欲しい! SNSやりたい!」

「べあべあべあぁ!」

「……鬼がSNSやりたいとか、世も末やなぁ」

「あら、いいじゃない。私だって、しののんとのラブラブを世界中に発信したいわ」

「好きにしてや。鬼は自由気ままやから相手にしていると疲れてまう」

「よし、東雲! 私は最新機種ほしい!」

「べあべあ!」

「自分なん!?」

「俺たちが携帯買えるわけがねえだろ! そもそも何を買えばいいのかさえわからねえよ!」

「べぁぁぁ」

「お年寄りやもんね」

「おい、こら! ばばあ扱いするんじゃねえよ!」

「べあべあ!」

「いやねぇ、千年以上生きるおばあちゃんたちは。あ、ちなみに、私は死んで、復活したからピチピチだからね。年寄りじゃないから」

「あ、姉貴ばっかりずるい!」

「べあべあ!」

「いや……若者はぴちぴちとか言わんやろ」

円が呆れたように呟いた。

「つーか、円。俺たちが、向島に残るのはお前のためでもあるんだぞ!」

「べーあ!」

「なんでや?」

「……よーく考えろよ。俺と熊童子が京都に帰ったとして、東雲といちゃつく姉貴と一緒に暮らすとか……お前、耐えられるか?」

「べあべーあ」

「あかん。想像しただけで軽く死ねるわ」

「だろ! だから、そこで守護神の俺たちだ!」

「べあー!」

妹たちのやり取りを面白そうに眺めていた茨木童子は、別に暮らすと言う選択肢が浮かばない円に苦笑していた。

だが、指摘しない。

茨木童子も、円たちと一緒に暮らすことを楽しみにしているからだ。

「ところで、しののん」

「なんや?」

「さっきから画面に映る物件の値段が少しおかしい気がするわ。桁が違くないかしら? 賃貸の値段じゃないわよ」

茨木童子が不思議そうに尋ねると、東雲は首を傾げた。

「自分、賃貸物件を探しているわけやないで」

「――まさか」

「中古でええから家を買ってまおうと思っとるんや。しばらく向島市で生活するやろうし。熊童子ものびのびくらしたいやろうから結界も張らんといかんやろ。家庭菜園もやっていたようやし」

「……いいのよ、妹たちなんてその辺の貸し倉庫にでも放り込んでくれれば」

「姉貴!?」

「べあ!?」

「なにを言うとるんや。いばちゃんの妹なら自分の妹やろ。みんなで楽しく暮らそうや」

「――っ、ずきゅーん!」

「あ、姉貴が急に効果音を口で言いながら胸を押さえた!」

「べあべあぁ!」

「わ、私の彼ピ……イケメンすぎ」

ぐっ、と親指を立てる茨木童子はそれはそれは幸せそうだった。

「――なんやねん、このノリ!」

かつて京都に君臨した茨木童子と、鬼と戦い続けた安倍一門の因縁が本当の意味で終わった確信をする円だったが、数日前との温度差に風邪をひきそうだった。