作品タイトル不明
15「寝るのが普通に怖くね?」①
夕食は餃子パーテイーだった。
夏樹、小梅、銀子、星子、菜々子、サタン、リヴァ子が包んだたくさんの餃子を母の帰宅と共にホットプレートとフライパンを駆使して焼きまくった。
これには母も大満足だ。
星子と菜々子が包んだ餃子は初めての体験だけあって不恰好になってしまったが、春子は「美味しいわ。お手伝いありがとう」と微笑み頭を撫でた。
いつもはツンデレな星子と菜々子だが、春子を前にするとデレデレだ。
春子はサタンにも「いつも美味しいご飯をありがとうございます」と丁寧にお礼を言った。
急な『ファンサ』に魔王サタンもデレデレとなり「は、春子しゃんのためなら、僕、お料理頑張りましゅ!」と魔王とは思えない初々しい反応を見せた。
もちろん小梅が「きんもー」とどこか死んだような目で言ったのは言うまでもない。
付き合いが長いリヴァ子も「うわぁ、うわぁ! きもい!」とスマホで写真を撮っていた。
恐るべきは、そんな状況でもにこにこ餃子を食べ続ける母だろう。
餃子のタレは、由良家ではメーカーのものか、定番中の定番である醤油とお酢だ。
ラー油を入れて、辛味を足すのも良い。山椒で刺激と香りを味わうものもよい。
山椒のみで食べてもいいし、お酢に山椒もなかなかだ。お酢に七味を入れて食べても美味しい。
焼肉のタレもうまいが、由良家の餃子はキャベツ多めなのであっさり目の方が好ましいのだ。
ひとり二十個と考えて、百六十個。おかわりの可能性も考え、二百個焼いた餃子は完食された。
あまった餃子の皮にチーズを敷き、トッピングにベーコンやウインナーを乗せてトースターで焼いたのも実に美味しかった。マヨネーズをベースにコーンを置くのもたまらない。
夏樹はお米が進むし、母たちはビールが進んだ。
お腹いっぱいになって大満足の夏樹たちは、後片付けをしながら順番に風呂に入っていく。
春子が星子と菜々子と一緒にお風呂に向かったのを見て、サタンがハンカチを噛んでいたがみんなスルーした。
たまにはこんなのんびりした日があってもいいな、と夏樹の心も穏やかだ。
疲れていた小梅もすっかり元気にあった。
女性陣は、風呂上がりも晩酌してそのままリビングに寝てしまう。
星子と菜々子は部屋に戻って就寝だ。
夏樹もサタンと一緒に部屋に戻って、寝る準備をした。
「はい、というわけで就寝の時間になりました」
「……誰に言っているんだ?」
ベッドの上に正座した夏樹に、サタンが怪訝な顔をした。
「まあまあ、お約束だよ」
「どんなお約束だよ」
「それよりも、これから寝るわけなんですが」
「そうだな。サタンさんは明日はちょっと港に行って新鮮な魚を買ってこようと思うから早めに寝たいんだが」
「なんで港?」
「明日、朝市やるらしいんだぜ。ほら、これ」
スマホの画面には、確かに朝イチの情報が表示されている。
「県外じゃん!」
「春子さんに美味しいご飯を食べてもらうためなら、距離なんて関係ねえ!」
「やだ、かっこいい」
「どやぁ!」
と、誰にも特にならない寸劇を披露すると、夏樹は真顔になった。
「それはいいんだけど。これから寝るにあたって懸念があります。実は、俺、二日連続ホラー映画もびっくりな夢を見ているんですけど」
「……夢の内容関係なく毎日叫んでいる気がするけどね」
「ツッコミと絶叫は違うんだよ!」
「知らねえよ!」
「だって、ほら、手形だよ! 今も足と腕にしっかりくっきり残ってるし! 小梅ちゃんも銀子さんもうわってドン引きだったよ」
「……ほら、あれだ、通行手形みたいな感じで手形がついているんじゃねえかな」
「おっさんギャグすぎて突っ込めない!」
「酷いこと言うなよ! 俺のハートはまだ十七歳だよ!」
眠るにはまだ時間がかかりそうだ。