作品タイトル不明
13「イベントがないとかイベントじゃね?」①
夏樹は結局、グラスを青年に譲って帰宅した。
青年は「今度会った時に嫌ってほどグラスを買ってやるぜ!」と言っていたが、相手は新たな神々だ。力を押さえていたが、強いことはわかる。
絶望の神や門の神よりも上だ。いや、両者の力を合わせても、まだ青年の方が上だろう。
とはいえ、戦う理由がまったくないので、楽しみしていると言って別れた。
「……で、なんで銀子さんはなんかやり切ったような雰囲気で、小梅ちゃんはめっちゃくちゃ疲れた顔をしてるの?」
銀子は一仕事終えたプロのような顔をして麦茶を飲んでいた。
ちょっとハードボイルドに見えるのが不思議だ。
小梅はテーブルに突っ伏して、全力で疲れたって顔をしている。
「もう嫌じゃ……夏樹じゃないんじゃが、俺様もイベントなしでゆっくりたいんじゃ」
「なんかあったんだ?」
「よくぞ聞いてくれましたっす!」
くわっ、と銀子が目を見開く。
「私と小梅さんが崇高な任務についている時の話っす」
「あ、お仕事だったんだ。珍しいね」
「お仕事といよりも、使命っすね」
「う、うっす」
「そんな使命の最中に新たな神々に襲われたっす」
「え? 見た感じに、無事、だよね?」
銀子も小梅も疲弊しているように見えるが、怪我などはしていないようだ。
少し銀子から血の匂いがするのは、戦いで負った怪我だろう。
今は治っているようだが、念の為ヒールをかけておく。
「ありがとうございますっす」
「俺の方じゃなくて銀子さんと小梅ちゃんに新たな神々が襲いかかるなんて。――鏖殺案件だな」
「いえ、襲撃者はきちんと私が殺しておきました。最後は無様に命乞いしていたっすよ、くけけけけけけけけ!」
「……なんか悪い人の笑い方しててこわーい!」
「俺様は見ているだけじゃったが、新たな神々を足蹴にして高笑いをする銀子はそれはそれは立派な悪役じゃったぞ」
「失礼な! 私は自分の使命に従ったまでっす!」
「……いったいどんな神だったの?」
何気ない夏樹の疑問に、小梅と銀子が顔を見合わせる。
「夏樹にはまだ早いんじゃ」
「夏樹くんにはまだ早いっすね」
「ちょ、どんな神だったの!? そんなこと言われると逆に気になるんですけど!」
しかし、小梅も銀子も頑なにどんな神と戦ったのか教えてくれなかった。
年齢制限がかかる神とは一体どんな神なんだろう、と夏樹が真剣に考えていると、買い物かごを持ったサタンが帰ってきた。
「ただいまー。今日は餃子よ! タネはもう作ってあるから、包むの手伝ってちょうだい!」
「はーい」
「へーいっす」
「いや、普通に返事しとるとこ申し訳ないんじゃが、良い年したおっさんが母親気取りなのがキモすぎるんじゃが! あと、おどれた居候じゃろう! なーんでこの家に住んでますみたいな雰囲気出しとるんじゃ!」
――この後、めっちゃ餃子包んだ。
(そういえば、今日はイベントがなかったなぁ。うんうん。こういうのんびりした日があってもいいよね!)