作品タイトル不明
10「幼馴染みの変化にほっとするんじゃね?」
「そうそう、茨木童子で思い出したんだけど。しののんと茨木童子さんはどう? こう、なんかえぐいことになってる?」
「……茨木童子に襲われた話から、そっち方面に話が展開できるなっちゃんはさすがやわぁ」
「それほどでも、あります」
夏樹としては、茨木童子は一度殺したので遺恨はない。
異世界で東雲の危機を救ったのも、他ならぬ茨木童子だ。
茨木童子は愛に狂い、選択を間違えた。
しかし、今の茨木童子は違うと信じている。
もし、東雲や円たちを裏切るのであれば、また殺す。
それだけの話だ。
「俺のことはさておいて、しののんと茨木童子さんはどうなの!? こう、口に出せないことしてるの!?」
「ぐいぐいくるなぁ、なっちゃん。でも、残念やけど、兄貴と茨木童子は清い交際や。というか、こっちがイライラするくらい初々しいで。最近の中学生でもあんな初々しくないわ!」
「おおう、意外だなぁ」
円はどこか苛立ったように、ブラックコーヒーを飲む。
「なんやか知らんけど、茨木童子は今の身体じゃいけないとか言いよって、エステに垢すり、温泉にサウナを満喫しとるよ」
「……茨木童子さぁん」
「肉体年齢的にも、もう少し育ってからとは思っているようやけど。もう人は食わんようやから、時間はかかるかもしれへんね。星熊が言うには、普通に食事すればそれなりに育つようやけどね」
「うーん、確かに今の茨木童子さんは俺よりもちっちゃいしね。手を出したら、しののんが無期懲役になっちゃう」
「無期懲役にはならんやろうけど……ボクも兄貴がちっこい茨木童子といろいろすると想像すると、通報したくなるんよねぇ」
「成長した茨木童子さんと良い感じになっちゃったら、佐渡祐介警察が出動するだろうけどね!」
「……祐介くんも、ダークエルフの嫁はんもらったんに、まだ嫉妬に燃えとるんか」
「俺たちの祐介くんなら白装束に頭に蝋燭巻いて五寸釘装備して血の涙を流しながら追いかけてくれるよ!」
「まごうことなくホラーやね!」
祐介ならば、間違いなくやってくれるだろう。
夏樹は確信している。
円も、祐介ならやりそうと思っているようで、否定はしなかった。
「でも、そっか。しののんはまだ茨木童子さんと清い感じなんだぁ。もうとっくに食われていると思っていたよ」
「星熊と熊が言うんには、なんやかんや言って、茨木童子もお堅いらしいで。そういうことは結婚するまでしないって言うとったわ」
「とらぴーは千手さんにめっちゃぐいぐいアタックしているのに」
「性格やない?」
「きっとそうだねぇ」
「あと単純に、茨木童子は現代日本満喫しとる。兄貴と一緒だからというのもあるんやけど、今まで興味はあったらしいで。でも、鬼としての立場があったから我慢してたって言っとったんよ」
「ビッグネームもビッグネームで大変ね! というか、意外と茨木童子さんと円ちゃんって会話しているんだね」
円は茨木童子を憎んでいた。
しかし、今の関係は違うようだ。
ふたりの関係性を心配していた夏樹としては、驚きと同時にほっとする。
「なっちゃんがけじめとったし、異世界では命を救ってもらったからね。それに、ボクのこと弟として扱ってくるんやで、図々しいやろ! もう毒気抜かれてもうたよ!」
もう円から茨木童子への憎しみを感じない。
夏樹はただ、それが嬉しかった。