軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

9「過去も大事だけど今も大事じゃね?」

「いやー、久しぶりにたくさん買い物したねー!」

夏樹と円はハンバーガーショップで昼食を取っていた。

服は動きやすさ重視の夏樹ではあるが、スニーカーは大好きなので時間がかかってしまった。

今まではバッシュ系を好んで履いていたのだが、蹴りや、剣、槍を全力で振るう時に踏ん張りが少し甘い気がした。

そこで、円の勧めでランニング系のスニーカーを試着したところ、フィット感がよかった。なによりも軽い。しばらくは慣れず違和感があるだろうが、慣れたら心地よい履き心地だろう。

せっかくなので円に付き合ってくれたプレゼントとして、同じスニーカーの色違いを贈った。

夏樹はグレー、円はブラックだ。

「ほんまやねぇ。にしても、なっちゃんのアイテムボックス最強やね。荷物をポンポン入れて置けるとか、喉から手が出るほどみんなほしがるやろうなぁ」

「異世界で地獄を見たから、このくらいのサービスはあってもいいと思う。マジで」

「せやねぇ。あの世界の、しかも人間側で、なんもこっち側知らん状態で戦えと言われるとか地獄やねぇ」

ハンバーガーをぺろりとひとつ食べ終えた夏樹は、コーラを飲みながら、ふたつめのハンバーガーの包みを開けている。

ソースのついた指を舐め、ちょっとお行儀が悪いが、ご愛嬌だ。

円は先にポテトを食べる派のようで、一本一本摘んでゆっくり食べている。

「ボクにスニーカー買ってくれておおきにね」

「気にしないてよ。今日、付き合ってくれたお礼だし」

「中学生には痛い出費やろ?」

「水無月家からもらったお金があるから大丈夫だって! まあ、そろそろ終わりに近いんですけどね。先日、茅さんにバイトしたいって言ったらほどほどの仕事を紹介してくれるって言ってたから稼がせてもらいます!」

「……なっちゃんならまず苦労せんやろうねぇ」

どちらかと言ったら、夏樹がやりすぎてしまった場合の事後処理をする水無月家の方が苦労するだろう。

円は苦笑した。まだやりすぎるかどうかわからないのに、なんとなく夏樹ならやらかしてしまうと思ってしまったのだ。

「こうやってなっちゃんとゆっくりする時間が来るなんて夢のようや。茨木童子に目の前で襲われた時にはほんま絶望したんやけど、奇跡ってあるもんやねぇ」

「そこだけはいまだに思い出せないんだけどね。きっと偉大なる河童大神さまがお救いになってくださったんだよ」

「せ、せやね。そうやといいね」

「そうだったかっぱー」

夏樹としても、円とこうして一緒にいる時間は貴重だと思っている。

円とすごした京都での日々は鮮明に思い出しているし、夏樹の宝物だ。

なぜ忘れていたのか、なぜ茨木童子に襲われて生きていたのか疑問はある。正直、喉に小骨が刺さったような、嫌な感じもする。

だが、どれだけ考えてもわからないものはわからないので、考えないことにした。

思考の放棄ではない。時間の無駄だ。

今、ここに夏樹がいて円がいる。

――それが一番大事なことだ。