作品タイトル不明
5「やっぱりホラー案件じゃね?」②
「――Snälla, sluta!」
夏樹はスウェーデン語で「お願いします、勘弁してください!」と叫んで起床した。
時間は七時前。
カーテンの隙間から日差しが差し込んでいる。
汗をびっしょりとかいた夏樹は、またやっちまった、とまるでおねしょをしてしまった幼少期を思い出す。
一応、漏らしていないかベッドを確かめると、最悪の事態にはなっていなかった。
安堵すると、腕が痛んだ。
まさかな、と腕を見てくっきり力強く握られたアザが残っていることを確認してまった。
夏樹の叫び声で起きていたのだろう。サタンが驚いた顔をして、夏樹の腕に残るアザを指さした。
「……お、おい、夏樹、それ……心霊現象的な?」
「――――――――ひゅっ」
夏樹は意識を失った。
■
気絶した夏樹をサタンが揺すってみるも、起きる気配はない。
「……無理もないっていうか、なぜ心霊現象が……いや、これ、本当に心霊現象か?」
魔王サタンを名乗るだけあり、悪霊が部屋の中に入ってきたらわかる。
そもそも夏樹の朝のモーニングシャウト対策のために結界を張っているのだ。
悪霊程度であれば、まず部屋に入ってこられない。むしろ、結界に近づこうものなら存在が消し飛ぶだろう。
ならば、もっと悪霊よりも格上の存在が浮かぶが、この部屋の中に入ってきて気づかなわけがない。
「ならば、内側からか」
サタンは夏樹の腕のアザに触れて目を閉じる。
夏樹の内側に何か問題があるのであれば、その原因を探ろうとしたのだ。
「――っ」
サタンの手は弾かれた。
夏樹にではない。
夏樹の内側を読もうとした瞬間、内側から拒絶されたのだ。
内側とは、内臓でも心でもない。
――魂だ。
「あー、こりゃ魂レベルで繋がっている何かか、干渉してきている何かだな。まったく夏樹は面白い」
サタンの右手は塩辛い水に濡れ、ズタズタに斬られている。
「ま、悪いもんじゃないだろうな。いや、夏樹の様子を見る限り、悪いもんなんだろうけど……」
「何か」は単にサタンを拒絶したわけではない。
悪意はないとはいえ、外部からの接触に「夏樹を守った」のだ。
「夏樹も苦労するねぇ」
手を軽く動かすと、傷が修復した。
ただ海水独自の匂いが取れぬため、手を洗うため洗面台に向かった。
サタンが部屋から出ていくと、夏樹がうめき始める。
「す、すみません、僕未成年なんで、お酒はちょっと。やめてください、そういうの良くないと思います。ひぅっ、な、なんでお酒が飲めないなら牛さんから直のみで牛乳を飲むことになるんですか? ぱ、パワハラぁ! 悪い子はいねえがぁ!」