作品タイトル不明
4「やっぱりホラー案件じゃね?」①
モスマンが帰り、女性陣は酒盛り、夏樹とサタンは順番にシャワーを浴びると、麦茶で乾杯しながらゲームで熱いバトルをした。
さすが勇者というべきか、魔王に見事勝利したのだ。
負けず嫌いのようでサタンが再戦を挑んできたが、夏樹は勝ち逃げしたかったので断固として断る。
その後、まもんまもんチャンネルを見て指さして笑っていたが、そろそろ日が変わりそうだったので就寝することにした。
「夏樹、明日は叫ばないといいな。次は病院に連れていくからな」
「……ははは、嫌だなぁ。サタンさんったら。なっちゃんは早朝から叫ぶ趣味ないから。どちらかと言ったら朝が苦手な低血圧だから」
「朝が苦手な子は朝から意味わかんない大絶叫はしないんだよなぁ」
「大丈夫だって! そう何度も同じことするわけないじゃない!」
「フラグだなぁ。どう考えてもフラグだなぁ!」
サタンはどこか諦めたように、布団の中に潜った。
夏樹もタオルケットをかけて、ゆっくり目を瞑る。
しばらくして、穏やかな睡魔が現れそっと眠りについた。
■
眠りについた夏樹は、夜の海にいた。
「……あ、やべ。これ、昨日と同じホラー案件で朝叫ぶやつだ!」
謎の女性に足を掴まれたアザはまだ消えていない。
正直、二度目だから余裕はあるが、怖いものは怖いのだ。
「そもそも、なぜ使わないってどういうことなんだ? ――っ、もしかして、俺の中に眠りいずれ河童キングに至る最強の力があるとでもいうのか!?」
残念ながら「そんなことねーよ! つーか、河童キングに至るのかよ!」と突っ込んでくれそうな千手はここにはいない。
「どこのどいつだかわからないけど、次は吹き飛ばしてやるよ!」
決して怖いから先制攻撃をしようと思っているわけではないのだが、身構えている。
「――あれ?」
気のせいか海面が高くなっている気がした。
いや、気のせいではない。
昨日は足首くらいの高さだったのに、今日は膝まである。
「海面が高くなったのか、それとも俺が沖にきちゃったのか……考えてもわからないんだけど、今回は何も反応がないからちょっと怖い。というか、いつくるのかわからないのが怖すぎる! お願いだから来るならきてよ! 前回みたいに話しかけてこいよ!」
吹き飛ばすといったものの、夏樹だって会話をする準備ぐらいはある。
もしかしたら、大事なイベントかもしれないのだ。
あまり考えたくはないが、黒髪の女性が「レベルアップさん」かもしれない。
だとすれば、この夢はギャラクシー案件となる。
ギャラクシー河童勇者としては避けて通れないイベントだ。
「俺の準備はできた! ――さあ、こ………………い?」
夏樹は気づいてしまった。
膝の下に何かがいる。
いなかったはずなのに、今はいる。
怖い。
怖いが、確認をしなければならない。
ゆっくりと、視線を下に向けた。
――夏樹の足と足の間。海の中に、女性が沈んでいた。
彼女は黒髪が長く顔はよく見えない。
しかし、目が合った。
次の瞬間、海の中から腕が伸びて、夏樹の腕を掴んだ。
「どうして私を使わないんだぁあああああああああああああああああああ!?」
感高く裏返ったような叫び声に、
「――――――――――――――ひ」
夏樹は恐怖で気絶した。
――由良夏樹のことをレベルアップしたそうに見ている。レベルアップしますか?