作品タイトル不明
2「モスマンさん再びじゃね?」②
モスマンの勘違いを訂正しつつ、小梅と銀子は今回の訪問の核心に触れた。
「それで、おどれらは結局、今後どうすることにしたんじゃ?」
「夏樹くんはUMAに甘いっすけど、私たちは甘くないっすよ?」
サタンも怒りを覚えたことだが、モスマンたちは夏樹を少々頼りすぎていた。
夏樹が人が嫌いな分、人以外を好ましく思っているせいもあるのだろうが、困っている人外を見つけるとほいほい助けようとしてしまう。
それはあまりにも危うい。
いくら夏樹が強くとも限界はある。実際、蒼穹の星槍が手元にない状況ではあったものの、花粉症の神を殺し切ることはできなかった。
人間が神と戦うのであれば、万全な状況で戦いたいはずだ。
しかし、夏樹はそうではない。
ノリがいいとは言える。
だが、小梅も銀子も不安になることがある。
ときどき、まるで死にたがっているように見える時があるのだ。
生物の本能で強い相手と戦うことは避けるはずだ。
しかし、夏樹は避けない。むしろ、戦おうとする。
最初は強さに自信があるからかと思ったが、夏樹は自分の強さをきちんと把握している。
把握しているのであれば、限界がわかるはずだ。
引けない戦いもあったが、それでも戦いに躊躇がない。
「バーサーカー」などと笑い飛ばすこともあるが、内心では不安と心配でいっぱいなのだ。
そんな夏樹に対して、モスマンたちがどう出るのか。
返答次第によっては、あまりよろしくない展開となるかもしれない。
「我々の結論は――」
モスマンは小梅と銀子、そして夏樹に向かってはっきりと告げた。
「魔族の保護を受けることを決めたよ」
■
「サタン様と何度かお話をさせてもらったのだよ。我々は、神々というタイプではなく、魔族は受け入れが大らかであると聞いた。何よりも魔族のトップである魔王サタン様からのお誘いだ。ありがたくお受けしたいと思った」
「そういえば、サタンさんが言っていたよね。でも、よかったよ。目の前にいるモスマンさんとかなら何かあったら力になれるけど、どこにいるのかわからないUMAさんたちは力になりようがないもんね」
夏樹の言うように、UMAはどこにいるのか、存在しているのかあやふやな存在だ。
こうして会ったことがあるモスマンやチュパカブラであれば、助けを必要とすれば助けに行くことができる。モスマンたちだって、夏樹を頼れるだろう。
しかし、夏樹のことを知らないUMAだっているのだ。
であれば、魔族という広い範囲で保護された方がいいに決まっている。
「……それに魔王サタンさんのお誘いっすからね。他の魔族や種族だってモスマンさんたちを無碍にはしないでしょうねぇ」
「ということは、これからはUMAは魔族になるんか?」
「いえ、そこはサタン様のご好意で、魔族サイドに所属するUMAとしてやっていきます。そうですね、例えるなら、私たちのバンドUMAはレーベル魔族所属になりましたって、感じですね」
「微妙にわかりづらいんじゃが!?」
モスマンの例えはさておくとして、UMAたちを魔族が守ってくれるのであればいいことだ。
「夏樹くん」
「うっす」
「我々は君に迷惑をかけてしまった。たくさんの迷惑をかけるところだった。すまないと思っている。君と出会ったことで、UMAの立場は守られるだろう。この借りは必ず返すと約束しよう」
「そんな気にしなくていいのに。俺的にもモスマンさんとの邂逅は、死ぬほどビビったけど嬉しかったし」
「そう言ってくれると嬉しいよ。それでも、君が助けを必要とした時、いつでもどこにでも飛んで行こう!」
「俺も、モスマンさんたちのためにいつでもどこでも飛んでくね!」
モスマンと夏樹がそっと人差し指を伸ばし、重ねた。
「……それはジャックとするやつじゃろうて」