作品タイトル不明
1「モスマンさん再びじゃね?」①
星子と菜々子とサタンが作ってくれたオムレツは最高だった。
母は、幼い外見のふたりが頑張って作ってくれたことに感極まってハグをしたほどだ。
サタンがもしかしたら自分もハグできるのではないかと星子の後ろに並んで順番待ちしていたが、彼がハグされることはなく、しょんぼりしていた。
そんな父親の姿を見て小梅が「きんもぉおおおおおおおおおおおおお!」と叫んだのは仕方がないことだろう。
そして、夏樹は小梅と銀子と三人で、夏樹の部屋でモスマンを出迎えた。
「――アメリカ、ウエストバージニア州ポイントブレザントからこんばんは。モスマン・忍です」
「そのウェストバージニア州ポイントブレザンとから、っちゅう頭言葉は言わんといかんのか!?」
「申し訳ない、レディ。私は紳士ゆえにきちんと名乗る癖があるのだよ」
「紳士ちゅーか、まあええじゃろう。んで、数日前に会ったはずが、イベントが多すぎたせいでまるで数ヶ月あっておらんかんった感覚のモスマンが訪ねてきたってことは、おどれらの立ち位置をしっかり決めたんじゃろうな?」
「もちろんだよ」
爛々と赤く光る瞳を向けられて夏樹と銀子が「ひえっ」と小さい悲鳴をあげて抱き合う。
大きな翼を持ち、全身黒い羽毛に包まれた二メートルを超える取り人間。
UMA界の有名人、モスマンのインパクトは久しぶりに見ると相当なものだ。
はっきり言って、怖い。
よく小梅は平気だと夏樹と銀子が感心する。
夏樹も一度はフレンドリーに接したものの、久しぶりに会うと謎の威圧感があり、ちょっとビビった。
「まずは、お礼を」
「お礼?」
「我々に服従を要求していた花粉症の神を倒してくれたとお聞きした。我々の脅威がひとつ減ったことがただただ嬉しい」
確かに、花粉症の神と戦った。
主に戦ったのは、小梅と花子だ。
問題は、モスマンたちに新たな神々サイドに加われと要求していた花粉症の神以外にも複数の花粉症の神がいることだ。
しかも、UMAたちと接触した花粉症の神は倒したが殺してはいないのだ。
いずれまた接触してくる可能性だってある。
「その前に、モスマンさんはどうやって花粉症の神と俺たちが戦ったのを知っているの?」
「花粉症の神から接触があった」
「おおう?」
「我々に最初に接触してきた花粉症の神とは別な花粉症の神だった。眼鏡をかけて髪を三つ編みに結んだ、カーディガンを羽織った少々気弱な少女の姿をしていた。花粉症の神が迷惑をかけたからと謝罪と、君たちと戦ったこと、花粉症の神はUMAに関わらない約束をしてもらった。ついでに花粉症を取り除いてもらったよ」
「UMAも花粉症になるんか!?」
「なるさ。なるとも。春は辛い。森の中に住んでいるからこそ、辛い。しかし、来年からの私は違うのさ!」
「わかる、めっちゃわかる」
「まあ、そうじゃのう。花粉症は辛いからのう」
接触した花粉症の神は、夏樹から花粉症を取り除いてくれた神だろう。
小梅もだが、花粉症から解放された喜びとても大きいため、「わかる!」とふたりは同意し、頷く。
「えっと、まあ、花粉症から解放されたのはよかったっすね。しかし、話し合いが結構時間かかった感じっすか?」
「……いや、恥ずかしい話だが……迷子になったスカイフィッシュを探すのに手間がかかってしまったのだ」
「まさかの理由っす!?」
「すべてのUMAと話ができるわけではないのだが、代表格とは話をしなければならないのでね。日本にもUMAが多いと聞いているから、接触しようと思っているのだよ。ぬらぬらしているUMAが日本UMA界を仕切っていると聞いているから、楽しみであるね」
「いやそれ妖怪っす! UMAじゃねーっす!」