作品タイトル不明
間話「さまたんとダンジョンの神じゃね?」①
――青森某所。
農家に休みはない。
しかし、できる上司を自称するさまたんは、従業員にきちんと休みを取らせていた。
残業などさせない。
いざとなったら、魔族パワーを出すまでだ。
ただし、マモンの休みは申告制だ。
一応、罰として青森で農業を手伝わせているので、線引きはきちんとする。
それでも休みをくれるのはよい上司であるからだろう。
そんなさまたんだって、休みたい時がある。
――仕事に疲れた?
否。疲れるわけがない。
農業は大好きだ。
さまたんを引き取ってくれて畑を受け継がせてくれた恩人のためにも、他ならぬさまたん自身のためにも作物に愛情と時間を注ぐのはまったく苦ではない。
――では、何に疲れたのか?
「お初にお目にかかります。私は人間の『なんで異世界にしかダンジョンがねえんだよ! 現代日本にもダンジョン現れろよ!』という人間の想いから生まれたダンジョンの神です。遊戯の神の紹介で来ました!」
「おい、ふざけんな。これ、悩み相談の流れだろう。青森は新たな神々の憩いの場じゃねえんだよ!」
――こいつらである。
愛の女神こと愛ちゃんが青森に遊びに来るようになってから、他の新たな神々まで青森に遊びに来てしまった。
幸いというべきか、月読命と敵対している新たな神々ではなく愉快が新たな神々ではあるが、こいつらの相手はとても疲れるのだ。
「青森に来れば問題が解決すると新たな神々の中では有名でして、ぜひご助言をいただきたいと」
「新たな神々の中で青森ってどんなイメージなの!?」
「いえ、どちらかというと青森のさまたんが有名なんです」
「ふざけんな!」
一日の仕事を終えて、風呂に入り、夕食を食べ、酒を飲みながら動画編集をして、さあ眠ろうというタイミングで来た「ダンジョンの神」に、さまたんの当たりは少々きつい。
「いや、まて! マモンの方が有名だろう!?」
「……あー、マモン氏ですね。マモン氏は有名ですね。最近では、まもんまもんを司る新たな神々ではないかという説も浮上しています」
「あいつは古い魔族だよ! そもそも神ですらねーよ!」
マモンは堕天した天使だ。
堕天した身でありながら、新たな神々に神として認識されているマモンは相変わらずまもんまもんだった。
「有名ですが、あまり相談相手として適した方ではないと伺っています」
「それで私かよ」
「はい!」
「その前にさ、尋ねてくる時間を考えなかったのかな!? 私もう寝るところなんですけど! お酒飲んでほろ酔いで気持ちよく寝るところだったんですけど!」
「お酒を飲んですぐに寝ると逆流性食道炎を引き起こす可能性が」
「うるせぇええええええええええええええええええええええ! そういう話をしているんじゃねえんだよ! マナーの問題がどうだって話をしているんだよ! ああ!?」
「し、失礼しました。言い訳にはなりませんが、近くの繁華街で焼肉を食べていたらこんな時間になってしまい」
「本当に言い訳にならねえな! こういう時、言い訳になりそうなことを言わない? せめて遠くから来たから今着いたとかさ!」
「あ、じゃあそれでお願いします」
「じゃあ、じゃねぇええええええええええええええええええええ!」
さまたんは全力で拳を放ち、ダンジョンの神を殴り飛ばした。
飛んで行ったダンジョンの神が夜空に煌めくのを確認して、さまたんは大きく嘆息する。
「はぁ、マジで疲れる。心労で倒れそう。ていうか、こんだけ騒いでいるのに起きてこないマモンも薄情だな!」
一言文句言ってやろうと思い、マモンの部屋に近づくと、亜子と電話しているマモンの声が聞こえた。
「夜中まで電話とか中高生かよ! ……ま、亜子ちゃんは高校生だからそんなノリなんだろうな。私だって空気よむから、今日は文句言うのやめとこ」
さまたんは肩を落とすと、台所でお水を一杯のんでから眠った。
――青森はやっぱり平和だった。