作品タイトル不明
101「加座間家で何かを企んでいるんじゃね?」③
「源蔵おじいちゃんと私の趣味が合わないことはさておくとしてね」
「さて置かれても困るのだがな」
「息子さん、あれでいいの?」
沙也加の問いかけに、源蔵が苦々しい顔をした。
「吉座はなぁ。わしとは違い、向上心がない。金がある家で不自由なく育ったせいか、金と権力に汚い人間になってしまった。厳しく育てたが、子育てとは難しいな」
「お孫さんの桐生くんは可愛くてプリティーでナイスショタなのに、吉座のおっちゃんは汚いおっさんだもんねぇ」
「……吉座を庇うわけじゃないが、別に汚くはないだろうに」
「金に汚く権力に汚く女にだらしないおっさんは、汚いから。心が」
「……否定できないのが悲しいな」
加座間吉座は源蔵の息子だ。
末の息子だが、一番霊能力があるから次の当主に決めたものの、残念ながら俗っぽい大人に育ってしまった。
そのため、源蔵とは不仲だ。
本家で暮らすことはなく、家を出ている。
妖怪や西洋の怪物を「コレクション」として売ろうと企んでもいるようだ。
さすがに源蔵が「保護」してきた彼らをそんなことはさせないと目を光らせているが、加座間家の培った人脈を利用されたら終わりだ。
いずれ、源蔵にも寿命がくる。吉座はその時を待っているのだ。
「私は吉座のおっさんよりも、問題があると思うんだよね」
「――あの青年のことか?」
「そうそう! あのイケメン! 仏頂面で、何考えているのかわからないクールな人! きっと、受けね!」
「……受けが何を指すのかわからんが、いや、いい、説明はせんでいい。余計な知識を増やしたくはない。ともかう、あの青年にはかかわるな」
「え? でも、人じゃないでしょう?」
「人じゃないから当たり前に関わろうとする発想がおかしい。普通は、忌避するものなのだがな」
「好きだから、今ここにいるんですよ」
「かっかっか。その通りだ。それでも、彼には関わるな」
源蔵は真剣な顔をした。
その顔はどこか焦りとも恐怖とも取れる感情が浮かんでいる。
さすがに沙也加も頷くしかなかった。
「源蔵おじいちゃんがそこまで言うなんて、彼は何者なの?」
「――神だよ」
「か、み?」
「死を司る、神だ。死神とはまた違う。人の死に対する感情から生まれた、恐ろしい神だ」