軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

95「やべえのが来ちゃったんじゃね?」②

「――――――あ」

「――――――げ」

突如現れた青年に、夏樹と千手が声を揃えた。

「だぁれ? この人ぉ?」

康弘は、青年をまったく知らずに困惑気味だ。

「……なるほど、こういう展開になるのですね」

月読は少し諦めた顔をした。

「――やあ! 大地の勇者にして、人外っ子の守護聖人! 佐渡祐介どえす!」

「……祐介くんはどちらかと言ったら、ドMな気が」

「違うよ、夏樹くん。違うよ。そうじゃないんだ」

急に現れたのは、この場に呼ばれていない佐渡祐介だった。

「話は縁の下から聞かせてもらったよ!」

「おい、待て、てめぇ、佐渡。なんで首に聴診器をひっかけてるんだ!」

「だから、縁の下から聞かせてもらったよ!」

「――こいつ、どんどん由良みたいになってきやがった」

「ちょっと、千手さん! 俺、こんなんじゃないよ!?」

「ちょっと、千手さん! 僕、こんなんじゃないよ!?」

おや、と夏樹と祐介が視線をぶつけた。

「いやいや。俺ね、新春期だからちょっとお茶目なところはあるけど、祐介くんほど弾け飛んでないから」

「いやいやいや、僕も夏樹くんみたいに、特技鏖殺じゃないからね。愛に満ち溢れた天使のような存在だからね」

「いやいやいやいや、天使さんに謝って! 堕天使だって祐介くんには負けるよ!」

「いやいやいやいやいや、見て! この清らかな僕を! 散々、汚された身体はソーニャたんによって浄化された! さようなら、今までの僕! こんにちは、新しい僕!」

「いやいやいやいやいやいや、普通に怖い! でも、俺たちの祐介くんが帰ってきた! それは嬉しい!」

「お前らどっちもいやいやうるせえんだよ!」

なぜか張り合う夏樹と祐介の頭に千手が拳を落とす。

ふたりは、ギャグ漫画のようにたんこぶを膨らませて、ぱたん、と倒れた。

「……素晴らしいツッコミですね、七森千手くん。どうですか、中学校で働きませんか?」

「お誘いは嬉しいですけど、毎日由良にツッコむだけの日々になりそうなので遠慮させてください」

「とっっっても残念です」

「……神様に手間かけさせんな、由良ぁ!」

力を込めて残念がる月読に、普段の夏樹の学校生活を察し、一応注意しておく。

「…………この子もなんか怖い。なっちゃんは狂気を感じるけど、この子は正気なのに何かおかしいのが怖い。普通に怖い。とても怖い」

祐介を見て、七森当主七森康弘はちょっとビビった。

「そうだ!」

がばっ、と祐介が勢いよく起き上がる。

「話は聞かせてもらったよ。縁の下で、みんなの話を聞きながら、同志に情報を調べてもらった」

「同志って誰だよぉ」

「ふっ、霊能関係じゃなくてもね、人外っ子大好きなボーイアンドガールはどこにでもいるのさ。情報提供者、ショタエルフを侍らせてえさんからのお便りです」

「おい、お前、ふざけんなよ。なんでラジオ風に話進めようとしてるんだよ。つーか、ショタエルフを侍らせてえさんとか意味わかんねえから! 説明すんな! 願望の意味はわかる。名乗りが意味わかんねえだけだから!」

「なにをおっしゃる。ショタエルフなど基本の基本。むしろ、男女問わず受け入れやすいジャンルではないかなと」

「……うーん、無理!」

「なるほど。千手さんは少数派、と」

「そろそろ俺もキレるぞ。温厚な千手さんもキレて大暴れだぞ?」

「冗談ですって! 千手さんが快活な鬼っ子大好きなのは僕ちゃんと知っているので!」

「よし、わかった。表に出ろ。全力で停止してやる!」

「はっはっは! ――お前も人外っ子大好きにしてやろうか!」

一触即発の空気の中、低く、それでいてよく通る声が響いた。

「そこまでにしておきましょう。俺たちは、加座間家と死の神をどうするか、話をしている最中じゃないですか。そうやって、ふざけるのはよくないと思います」

きりっ、とした顔でそんなことを言う夏樹に、

「由良ぁ! お前だけには言われたくねえよ!」

「ちょっと夏樹くんには言われたくないかな!」

千手と祐介が全力で抗議した。

「あ、私、お手洗いに行ってきますね」

「では、私はお茶でももらってきます」

とりあえず、三人揃っても文殊の知恵になりそうではない夏樹と千手と祐介が落ち着くんを待つため、月読と康弘は小休憩に入った。