作品タイトル不明
94「やべえのが来ちゃったんじゃね?」①
「ふーむ」
夏樹は考える。
短慮を起こすのはよくない。
ゆっくりと思考を巡らし、熟考する。
「――よし、加座間家を更地にしちゃおう!」
「なんでそうなるんだよ!」
すぱんっ、と千手が夏樹の頭を引っ叩く。
「真面目な話だけど、いる? その家? みんなのためになる? 人間的にもそれ以外にも必要かな?」
「……いらねえだろうな」
「ほらー! 鏖殺! 鏖殺! 更地! 更地!」
「俺には由良がただ面倒臭いから何も考えていないように見えるんだがな」
「ソンナコトナイヨー」
「じゃあ、こっち見ろよ。あからさまに目を逸らすんじゃねえよ。わかりやす過ぎだろ!」
千手としては、夏樹がこうくると予想はできていた。
月読もこうなるだろうと思っていた。
まだ夏樹との付き合いが浅い康弘が「最近の中学生ってこわっ! こわっ!」と怯えている。
「ぶっちゃけ、俺の知らないところで勝手にやるのならどうぞ、ご自由にって感じだけど。もし、河童さんに危害を与えようものなら親類縁者含めて地球上から存在が消えると思って欲しいね」
「物騒だな、おい! 首謀者だけで勘弁し……いや、全員やっちまった方があとで楽か」
「千ちゃんまで怖いこと言い出した!」
「千手パピー、後腐れなくやっちまうのが一番だよ!」
「……この子、本当に怖い! 本当の意味で最後の手段を最初に持ってくる発想がしゅごこい!」
「――勇者ですからっ」
「ふぇぇ、なにそれー。きりっ、としててかっこいい」
「……俺はおっさんの、ふぇえ、なんて声を聞いた耳がすごいことになってるよ!」
千手はツッコミに息を切らせながら、月読に問いかける。
「月読様はどうお考えですか?」
「そうですね。まず、死の神が関わっているという情報がある以上、加座間家を無視できません。ただし、私が加座間家に何か処罰をしようというわけではありません。あくまでも新たな神々の死の神と話をする必要がある、と言う感じですね」
「お話しですか?」
「はい。――不死の神がいるのかどうかを問います。その過程で戦いが必要であれば、戦いましょう」
院に所属する一族を、院にまったく関係のない月読が裁くつもりはないようだ。
夏樹としては、院トップである素盞嗚尊とマブダチなので、チクってしまおうと考えている。
「もし、加座間家が法を反しているのであれば捕まえてもらいましょう。霊能力者としてのルールを逸脱しているのであれば、そちらの処罰もされるべきです」
「へっへっへ、月読先生が出るまででもありやせん。あっしが、ちょっと星子さんと一緒にちゅどんと更地にしてきまさぁ」
「……どうして夏樹くんは急に三下みたいな口調になってしまったんでしょうかね?」
手を揉みながら、急に卑屈な笑みを浮かべる夏樹に、月読が微妙な顔をする。
「月読先生がやれとおっしゃってくれれば、あっしは大義名分を得ますんで。嬉々として加座間家の人間を鏖殺し、更地にしてみせまさぁ!」
「いえ、今の段階では怪しいだけですから」
「なにをおっしゃいます。怪しいは、殺せ、です」
「……私の弟でもここまで物騒じゃありませんけど」
「とりあえず鏖殺してから考えやしょうや。へへへ」
夏樹としては、面倒ごとを起こされる前に、起こせないようにしてしまいたい。
もう面倒ごとを起こしているのなら、存在ごと消してしまいたい。
何も考えずに、掃除をする感覚でやってしまっていいと思うのだ。
「――話は聞かせてもらったよ!」
夏樹たちがいる部屋の障子が、すぱーんっ、と勢いよく開けられた。