作品タイトル不明
93「加座間家のお話じゃね?」②
「はい! 千手さん!」
「はい、由良ぁ! 真面目に質問しろよ!」
「直接的に取り込むってどう言う意味ですか!?」
「あー、なんというか、これ、言ってもいいのか? 中学生に教育に悪いだろ……あ、今更か!」
一瞬だけ躊躇ったものの、千手は思考を切り替える。
殺伐としている夏樹に変な配慮はいらないと判断したのだ。
「嫌な話だが、そのままだ。血を啜ったり、肉を食らったり、移植したりとできることは何でもしているって話だ。実際にやっているかどうかまで、俺は知らねえ。知りたくもねえ。だけどな、加座間家が妖怪や、悪魔、人間が命をかけて頑張ればなんとかできる魔族や神を捕らえているって噂はある」
「おえっ」
その噂が事実であれば、実に気分が悪い。
夏樹はちらりと月読を伺う。
「その辺って実際どうなんですか?」
「加座間家に関してはわかりかねますが、実際、行方不明になる神々や魔族はいます。ただ、すべてを管理しているわけではありませんので、よくわからないのです」
聞けば、下級の神や魔族は人間を見下している者が多いらしい。
人に対してどう接するか、決まりはない。
名もなき神や魔族なども多くいて、人間に悪意を持つ者もいる。そのせいで戦い、倒される者もいる。
神々も魔族も、誰がどこにいるかなど把握していない。管理する者もいない。
それゆえに、行方不明になっていても実際はどうなのかわからないようだ。
「……神様も魔族もざっくりだなぁ」
「古の時代ならいざしらず、現代ではみんな好き勝手に生きていますからね」
苦笑する月読に、由良家で主夫をしている魔王を思い出す。
「確かに」
ただ、自由気ままに生きているのはいいとして、加座間家が捕らえているのであればいろいろ問題だ。
「というか、そんな簡単に人以外の力を得ることってできるものなんですか?」
夏樹は、まず、力を取り込めることに懐疑的だ。
人間に、他者の力を吸収する能力はない。仮に、吸収能力を持つのであれば、話はわかるのだが、無いのであれば無駄な気がするのだ。
「できると言えますが、できないとも言えますね」
「……そんなどっちもありみたいな回答をされても」
「失礼しました。場合によるんですよ。例えば、ですが、ただの一般人に妖怪を取り込ませても何もかわらないでしょう。魔族でも、神でも同じです。しかし、これが、神や魔族の中でも名のある上位の者であれば……話が変わってきます」
夏樹は首を傾げた。
どうも上手く話を噛み砕けない。
「私を含め、神も魔族も存在そのものが力です。そんな存在を取り込めば少なからず力を得るでしょう。――しかし、我々の力は人間にとって猛毒でもあります」
「え? 先生、毒系なんですか?」
「そうではなく、例えです。少し想像してください。君たち人間が小さな鍋だとしましょう。料理をしようと思って食材を入れる時に、鍋以上のものをいきなり入れないでしょう」
「そりゃそうですよ。こぼれちゃいますから」
「神や魔を取り込むということはそういうことです。取り込む人間側が取り込む力を調節などできませんので、あふれんばかりの力が流れ込んできます。そして、大体が鍋から溢れるだけではなく、鍋を置いている部屋すら破壊してしまいます」
「内側から弾け飛んじゃいますね!」
「そういうことです。例えば、我々が人間に力を与え、授けることがありますが、人間以上の力を与える場合は、その者の枠を拡張してから渡します。その枠が子孫へ受け継がれる場合もあるでしょうね。ただ、人間が人間で都合のいいように、力を取り込むことも、力を止めることもできません」
「えっと、じゃあ、そもそも意味が」
「ないですね。しかし、話を聞く限り、加座間家の人間は人間とは違う。人以外と交わり、人でありながら人とは違う。現代人は混血でありますが、それでも人以外の血は誤差のようなものです。あくまでも完全なる血統という純潔が、人間としてありのままであるだけであり、今の人間もちゃんと人間です」
現代に生きる人間に、人間だけの血を引く純潔はほぼいない。
だからと言って、大半の人間がほぼ人間である。
純潔と混血では、誤差だ。
その誤差が、大きな違いではあるのだが、今はいいだろう。
人間は少しくらい血が混ざっても人間なのだ。
仮に、魔族や神との間に子が生まれても、人間として生まれたのであれば人間だ。
「私が怖いのは、加座間家がその時の思いつきで人以外の血を取り込んでいた場合です。いずれ神や魔族を取り込むことを想定し、人間を止めるために時間とお金をかけていたとしたら、私たちの想像を超えて大きな問題になるでしょう」