作品タイトル不明
91「裏にいる奴がわかったんじゃね?」②
「千手さんのパピーは加座間家を知っているの?」
夏樹が尋ねてみると、苦い顔をした康弘が頷く。
「知っているもなにも、ウチの嫁さんの妹が加座間家に嫁いでいるんだよなぁ。なるほど、そう繋がるのかぁ。康弘くんびっくり!」
「うぜぇ! クソ親父! 七森家が悪いみたいな感じはやめてくれよ! あんたたちが処罰されるのはどうでもいいが、俺によくしてくれた人たちだって今も働いているだろうに! その人たちが路頭に迷うようなことがあったらさすがに許さねえぞ!」
結局、七森家も無関係ではなかったようで、千手が怒り康弘の胸ぐらを掴んだ。
「落ち着いてください、七森千手くん」
「――はい」
月読に止められると、千手も従うしかない。
「康弘殿、加座間家に関して何か情報をいただけると助かります。あまり人間の、特に霊能力者に関しては関わらないようにしていましたので疎いのです」
「……かしこまりました。私の知る知識が月読命様のお役に立つのかわかりませんが、喜んでお話しさせていただきます」
そう前置きをして、康弘は話を始めた。
「加座間家は信仰一族です。院に所属したのも、五十年ほど前のことです。院に所属するタイミングはまあいいのです。もともと、加座間家は霊能力者ではなかったのですから」
「千手さんのパピー? 霊能力者じゃないのに、院って所属できるの?」
「できるんだよなぁ。ぶっちゃけ、旧家の人間も力はどんどん落ちている。それに、霊能力を持たず、一般人として生きる以外の選択肢しかない子も生まれる。逆に、今時、こんな裏家業をしたくないと縁を切る人間も多いんだ。院は、霊能力者を管理する組織だが、もっと言えば関係者をまるっと把握しておく組織でもある。加座間家だって、それこそ、霊能力者を知っているのであれば一般人だって所属できる」
「めんどい!」
「だよね、おじちゃんもそう思う! で、これがまた面倒臭いのが、加座間家っていうのは今でこそ霊能力者なんだが、元は違う。一般人だ。タチが悪いのが、「特別」に憧れる一般人だってことだ」
康弘の説明に、月読と千手は何か納得したように頷いた。
しかし、夏樹はいまいちよくわからなかった。
「特別に憧れるってどういうこと?」
「なっちゃんもあるだろ。超能力が欲しいとか、映画に出てくるヒーローになりたいとか」
「いや、特にないけど」
「…………」
「由良ぁ! お前もあるだろ! 河童になりてえとかそういうのが!」
「めっちゃある! ――つまりそういうことか。加座間家って、霊能力者に憧れちゃった痛々しい一族なんだね!」
夏樹の理解力を目の当たりにして、康弘は酸っぱいものを口に入れたような顔をしている。
なぜ河童に例えたのかよくわからないようだ。
「と、とりあえず、そんな感じの一族だったんだが、貿易関係で金だけはあってな。古今東西、霊能力を持つ人間を一族に取り込み続けた」
「それって、結婚ってこと?」
「中学生のなっちゃんにはあまり深掘りしないで欲しいので、結婚という手段もあったとだけ言っておこう。ただ、血を取り入れても、外に出された霊能力者など大したことはない。加座間家に霊能力者は発現しなかった。そこで、奴らは、ハーフを取り入れることにした」
「……一応、言っておくが、由良。ハーフっていうのは、人と人以外の間に生まれた子供のことだ」
「沖縄と北海道のハーフじゃないんだね」
「それをハーフとは言わねえからな!」
「じゃあ、人間とブラックバスの」
「いるなら連れてきやがれ! 逆に会いたいわ!」
千手が思い切り夏樹の頭を引っ叩いた。