作品タイトル不明
89「雑魚に不死とか宝の持ち腐れじゃね?」②
「月読先生、こんちはーっす!」
「お疲れ様です。どうぞ、こちらに」
突如現れた月読に、夏樹は軽く挨拶し、千手が座布団を用意する。
そして、七森康弘は、
「ははぁー!」
全力でひれ伏した。
無理もない。
神代の時代から現代まで名を轟かせる神が目の前にいるのだ。
普通の反応だ。
むしろ、夏樹の反応の方がおかしい。
「七森康弘殿、どうか自然に。あまり仰々しくされるのは好みません。千手殿にもお世話になっているので、気楽に接していただけた方が助かります」
「そ、そうおっしゃるのであれば……どうも、千ちゃんのパパの七森康弘でーす! しくよろ!」
「…………」
「…………」
「…………」
「だって自然に気楽にって言ったじゃない! 嘘つき!」
気楽にどうぞ、と言われて本当に気楽に接する人間は少ない。
特に霊能力者の一族になると、顕著だ。
なので、康弘の対応に月読はびっくりし、固まっていた。
「い、いえ、違います。いいんですよ。驚いただけですから、どうぞそのままで」
むしろ、こうやってフランクに接してくれる方が月読としては好ましい。
ここまでフランクにされたことは、初めてだが。
「よかった、パパ安心! お家取りつぶしかと思っちゃった!」
「……愉快な方ですね」
「本当に申し訳なく」
千手が謝罪するが、月読はまあまあと笑う。
「ところで、月読先生って確か誰かを拷問していたんですよね? 終わったんですか? あ、死体の処理なら手伝いますぜ、ぐへへ」
「なぜ急に下衆っぽくなるんでしょうねぇ。あと、拷問じゃありませんし、殺してもいません。ざっと、記憶を見させてもらっただけで、すでに水無月茅殿にお渡ししてあります」
「結局、どこの誰に関して何を知りたかったんですか?」
夏樹の疑問に、月読は首を傾げた。
「夏樹くん?」
「あー、月読様。由良の奴は、恐怖から記憶を封じちまって。水無月俊平周りはなかったことになっているんです」
「……なるほど。わかります。水無月俊平の過去を見ましたが……都さんにされたことを知り、男としてひゅんってなりました。あの子、あんなに禍々しかったですっけ?」
月読でさえ、都の所業は怖かったらしい。
「うっ、都さん、拷問、股間、やめて、女の子になっちゃう! 頭が、痛い!」
「……由良も股間に集中攻撃するからどの口がって感じなんだがな」
「見るのとやるのでは違うようですね」
とりあえず水無月都は怒らせないようにしよう。
男性たちはそう決めた。