作品タイトル不明
86「月読先生のお預かりになるんじゃね?」
「――お待ちしていました」
水無月家に、水無月俊平を連行してきた一同を出迎えたのは、水無月家当主である水無月茅、相談役の星雲、雲海をはじめとして、水無月家の面々だった。
――そして、月読命も一緒にいた。
「……月読先生?」
「はい。月読です。お疲れ様でした、みなさん。都さんはすでに私の正体を知っていると思いますが、水無月家の皆さんにはお伝えしていなかったので、ご挨拶させていただきました」
茅、雲海、青雲などは月読の正体を知っているが、他の人間たちは月読が神であることを知らない。
以前、月読自身が言ったことだが、彼は人間として生きているため、霊能力者たちには月読命を祀る一族の関係者くらいにしか思われていなかった。
それを改めて、自身が神であると言ったには理由がある。
「なんじゃ、月読。出張ってきたんはええが、夏樹なら千手と仲良くおねむじゃぞ」
「おねむ? なぜですか?」
「恐ろしいものを見てしまったからよ」
小梅と花子がぶるりと身を震わせる。
「よくわかりませんが、凄まじい力を感じ取りましたので、その関係でしょうか?」
「そうとも言えるし、言えないのよね」
「……はい?」
言葉を濁す花子に、月読が首を傾げた。
「まあええじゃろうて! それで、月読は何をしにきたんじゃ?」
「水無月俊平をお借りしたく」
「――ほう。銀子喜ぶんじゃ、おどれの大好きなおっさんとおっさんがエグいことをする展開じゃぞ!」
「待ってくださいっす! 私は可愛らしい少年たちの絡みが大好きなのであって、おっさんには興味がないっす! いえ、ゼロではないっすけど! ないっすけど、違うんです!」
銀子の訴えに、控えている水無月家の人間の中で「わかる」と頷くものや「おっさんこそ至高」と反対する者がいた。
どこにでも銀子の仲間はいるらしい。
「小梅さん、違いますからね。何を考えているのかなんとなく察しましたが、まったくもって違うと言っておきます。というか、どうしてあなたたちは前置きとして一度ふざけないと話ができないんですか?」
「舐めたらいかんぞ? 話が始まってもふざけとる! この程度ですんるどるのは夏樹が気絶しとるからじゃ!」
「…………はぁ」
そんなことを言われた夏樹は、水無月家の塀に千手と仲良く立てかけられている。
水無月俊平へ行った都の数々の所業を思い出しているのか、ふたりして震えてもいた。
「とりあえず、水無月俊平を引き渡してください」
「ちょっと待ちなさい!」
銀子が襟首を掴んで引きずる水無月俊平に近づこうとした月読に、花子が待ったをかけた。
「理由くらいいいなさいよ」
「……今は言えません。場所が悪いのです。水無月俊平の体質から察していただけませんか?」
「…………ごめん、ちょっと難しい」
「…………ごほんっ」
察してくれなかった花子に、月読は大きく咳払いをすると同時に、人には気づけない結界を花子と自分に張った。
「不死の神について関わりがあるのかどうかを調べたいんですよ。わかるでしょう?」
「――あー! はいはい、そうだったわね。そういえば、そんなことを聞いたような聞いていないような」
「ちゃんと五体満足でお返しするので、一時間ほどお借りしますと水無月茅殿にも話はつけましたので……よろしいですか?」
「よろしいわよ!」
月読は銀子から水無月俊平を受け取ると、一同にお辞儀をした。
「しばしお待ちください」
そして、消えた。
「よくわからないけど、私たちの仕事はおわりよ! 風呂入ってサウナキメて、ご飯にしましょう!」
きちんとすべきことを成し遂げた花子は、いえーい、と大きく手を振り上げた。