作品タイトル不明
間話「あとで話そうとしたことって大体忘れね?」
――青森某所。
「おばあちゃん! 芋焼酎の水割りをロックで!」
「……さまたんちゃん、飲み過ぎよ。もう酔っ払っちゃって」
「酔ってないもん!」
行きつけの居酒屋で、いい感じに酔っ払っていたさまたんはグビグビとジョッキに入ったビールを飲み干して、芋焼酎をおかわりした。
お店のおばあちゃんも「しょうがないわねぇ」と言いながら、芋焼酎を注ぐふりをしてたっぷりの氷に水を注いでさまたんに出す。
お礼を言って受け取った、さまたんはごっごっご、と半分ほどグラスの中身を飲む。
「かーっ、やっぱり芋焼酎は水割りがいいなぁ!」
「……酔っ払いすぎだろ」
呆れた声を出して店に入ってきたのは、魔王サタンこと太一郎だ。
のれんをくぐりおばあちゃんに「とりあえず生で」と注文すると、さまたんの隣に座った。
「急に呼び出すから何かと思ったら、すっかりできあがっているじゃねえか」
「……ヤケ酒だよ」
「またマモンか」
「わかる?」
「後にも先にも、お前にヤケ酒飲ませることができる奴なんてあいつしかいねえだろ。それで、今回はどんなまもんまもんなことをしでかしたんだ?」
「……あの野郎、動画編集はまかしてくださいまもんまもんって言いながら、亜子ちゃんにドヤ顔で編集の仕方を教えて、たまに指が触れて、きゃっ、触っちゃった! っていちゃついていやがるんだ!」
「ピュアかよ! うちのピュアよりもピュアじゃん! 最近の中学生だってもっとぐいぐいいくだろうに!」
「もう見てられなくてダッシュで居酒屋だよ」
「……寂しいな、さまたん」
「うっさい!」
サタンはジョッキを受け取り、礼を言ってうまそうにビールを飲む。
向島市から青森までひとっ飛びであるが、一瞬で着くわけではない。
しばらくの飛行は喉を渇かせていたので、ビールが美味い。
「マモンの話はいいんだよ! 忘れたいから飲みにきているんだから!」
「はいはい。んじゃ、少しだけ真面目な話っていうか、俺も不思議に思っていた話でもするか」
「なんだよー」
「……不死の神って知っているか?」
「ああ? 皮脂の神? いねえよ、そんな神!」
「不死だよ! 誰が、皮脂って言った!?」
絶対にいないと言い切れないのが新たな神々の怖いところだ。
魔王サタンといえど、まさか美脚の神が存在すると知った時には、さすがに驚いた。
――人間の想いってすげえっていうか、やべえな!
「不死? んー、あー、月読命が夢中で追いかけているアイドルか」
「ちげえよ! 追いかけているけどアイドルじゃねえよ。推し活みたいになっちゃったじゃねえかよ!」
「うーんと、いるって話は聞いたことあるけど、見たことはないなぁ。聞いた話も噂程度だし……もしかしたら、月読命の脳内彼女かもしれない」
「だから……いや、それでいいよ、もう」
月読命が不死の神を探していることはサタンも知っている。
仮に、サタンが見つけたら間違いなく殺す。
不死の神は魔王からしても、存在していい神ではない。
問題は、不死の神が本当にいたとして、殺せるかどうか、だ。
「ったく、新たな神々も思春期よろしく暴れやがって」
「つーか、愛ちゃんから聞いたけど、上位の神を十天とか呼んでいることがもう痛々しいよね」
「……だな。俺たちも通った道だけどよ」
実際、十天すべてを知っているわけではないが、サタンも感嘆するほどの強さを持つ神もいる。
「だけどなぁ、俺としてはあいつらが静かにしていることの方が怖えよ」
「あいつら?」
「なぜか新たな神々のくせに、新たな神々としてまったく行動しない奴らだよ。何を考えているのかさえわからねえ」
「………………あー、鮪の神と焼き鳥の神とステーキの神だっけ?」
「海の神と、大地の神と、空の神だよ! 魔族的に言ったら、リヴァイアサン、ベヒモス、ジズみたいな感じでいるじゃない! 駄目だ、しばらくこんな感じだな。水でも飲んでいれば、そのうち酔いも覚めるだろう。あ、おばあちゃん、俺ね、肉じゃが食べたい!」
「はーい」
サタンはさまたんの酔いが覚めるまで、居酒屋のメニューを堪能した。
寝息を立てたさまたんが一時間ほどして酔いを醒まして起きるのだが、ふたりは真面目な話をすることなく、ビールを飲みまくった。