作品タイトル不明
「月読先生も大変じゃね?」④
「――なぜ私が、ちょっと、ゴッド殿!?」
生徒が授業を受けている最中、職員室の隅で月読はゴッドに電話を切られて肩をすくめていた。
「……なぜ私がアテーナー殿の保護者にならないといけないんですか。ゼっさんに任せればいいじゃないですか、向島市にいますよ? 介護施設で生き生きと働いていますよ?」
もう通話は切れている。
月読が断れないように、しっかり両親に許可をとっているのが実にやり辛い。
「はぁ。何度ため息をついたでしょうか。いい加減、幸せが逃げそうです」
今月だけで何度ため息をついたのかわからない。
「……アテーナー殿も、反省されているようなので何か問題を起こすとは思わないので、構いませんが……他の神に預けてもいいと思うんですよね。私でなくとも、もっと面倒見のいい神はいるんですが」
席に戻り、パソコンを開く。
メールをチェックしてまたため息が漏れた。
「……この問題も解決していませんでしたねぇ」
院が若き霊能力者を育てる霊能学校から、由良夏樹を生徒としてほしいというメールだった。
何度も断っているし、本人も霊能関係の学校に進む気はないと伝えているのだが、しつこい。
気持ちはわかる。
夏樹のような神々や魔族と戦える人間は、喉から手が出るほど欲しいだろう。
何もせずとも、三年間過ごしてもらえれば、母校として院の中で大きな顔をできる。
しかし、彼らはリスクがわかっていない。
夏樹の強さで自分たちの地位を上げたいのであれば、夏樹がなにかやらかしたときに責任を取る必要もあるのだ。
最悪、学校が更地になる可能性もある。
なんなら、新たな神々の好戦的な神に襲撃を受ける可能性だってある。
一番あり得そうなのが、一般家庭出身の夏樹に旧家の生徒が突っかかった場合だ。
死んでも責任が取れない。
本人だけならいざ知らず、最悪家ごと物理的に消される可能性だってある。
「……その時に文句を絶対に言わないと誓ってくれるのであれば、少しくらいは手伝うんですが」
夏樹にちょっかいを出せば、最悪、素盞嗚尊が出張ってくる可能性がある。
このふたりに暴れられたら、止められる者は本当に少ない。
「一番、しつこいのが権力大好きな人間というのが問題ですねぇ。せめて学校見学だけでもどうですか、と、まだ話が通じそうな学校のことを夏樹くんに話をしてみましょうかね。正直、どこかに顔を出すくらいしてくれないと、諦めない学校が多いんですよねぇ」
毎年、進路は大変だ。
月読は机からエナジードリンクを取り出して、一気飲みした。