作品タイトル不明
85「とりあえず帰宅の時間じゃね?」
結局、三十分ほど経ってようやく都の怒りが収まった。
「――ふう。このくらいにしておきましょう。反応もまったくありませんし、やるだけ時間の無駄ですね」
「……二十分前に気づかんかい」
「都さんは怒らせないようにしようっと」
「鬼でもここまでしねえよ」
「グロ耐性あるのに酒飲んで逃避したくなっちゃったっす!」
「正直、夏樹よりもおかしい人間を初めて見たわ」
小梅、花子、虎童子に続き、合流した銀子と星子も返り血をつけて良いやり切った顔をする都にドン引いていた。
少し目を逸らすと、夏樹と千手が仲良く倒れている。
夏樹は性癖暴露されて倒れたが、なんとか復活するも都が中年男性を切り刻む光景に再び失神した。
千手は、裏稼業の人間でありながら、度を超えたグロい光景を見てしまい気絶した。
ドン引きするだけで済んでいる女性陣たちは、やはり強いと思われた。
「それにしても、本当に死なないものですね。これが、不死ですか?」
殺すつもりでネチネチ攻撃していた都が疑問を浮かべるが、否と返事をしたのは小梅と花子だった。
「不死じゃないじゃろうなぁ」
「そうね。再生能力を馬鹿みたいに与えて擬似的な不死のようなものを再現しようとしたんじゃないかしら」
「そもそも不死なんぞおらん。太陽神じゃって、いつかは死ぬんじゃ。ゴッドだって例外じゃないんじゃ」
「そういうこと。絶対的な不死はいないわ。いたとしたら、それはもう化け物でしょうね」
新たな神々のトップである太陽の神でさえ、いずれは死ぬ。
この世界に生まれた生命は、人、神、魔族関係なく死が待っているのだ。
寿命の違いこそあるが、死は平等に訪れる。
「……そうなると、誰がこんなお馬鹿なことしたっすかねぇ。新たな神々であれば、いずれぶっ殺すってことでいいんすけど、こういうのって意外と人間なんすよねぇ」
不死を願うのはだいたい人間だ。
神や魔族、妖怪が不死を望むことは少ない。
それだけ、人間は「生きる」ことに執着しているのだ。
「誰がこんなことをしたなんぞ、俺様たちが考えることじゃないんじゃ。さっさとこのおっさんを水無月家に運んでお仕事完了じゃ」
「そうね。考えてもどうせ答えなんて出ないものね」
難しいことを考えても、この面々では答えが出ないことはわかりきっていた。
銀子と都は人間だ。
小梅と花子は、天使だが自由気ままに生きてきた。
星子に至っては、出身世界すら違う。
答えが出るはずがない。
「ということで、帰るんじゃ!」
「おー! って、その前に、この男子たちどうするのよ。昔、観光で寄った魚市場にならぶ魚みたいにぴくりともしないんだけど」
「ダーリンは俺様が担ぐぜ!」
「夏樹は俺様に任せんかい!」
「……都、あんたがあのおっさんを担ぎなさい。私、嫌」
「私だって嫌ですよ! なんであんな赤の他人を」
「実父でしょうに……」
「私側からすると顔さえ知らないおっさんが急に父親ヅラするとか悪夢以外何でもないんですけど」
「……はぁ。しょうがないわね、銀子頼んだわ」
「よろこんでー! とはならねえっすから!」
「……そういえば、森山田さんに良いことがあったみたいでシャンパン送られてきたんだけど、あげるわ」
「へい! 喜んでー! ささっとこのおっさん、運びますね! ちょっと持つのは面倒なんで引きずってもいいっすか?」
「いいわよ。ところで、あんたはその子をいつまで肩車しているの?」
「さあ? 取り憑かれたみたいに離れないっすよ」
カラカラ笑う銀子は、動かない水無月俊平の腹部に思い切り蹴りを入れると、足を掴んで引きずっていく。
「――はぁ、疲れた」
帰ったらお風呂とサウナをキメよう。
花子はそう考えて、背伸びをした。