作品タイトル不明
81「気づけば背後にいるんじゃね?」②
「うわぁあああああああああああああああああああああああ!?」
水無月俊平が再び叫んだ。
先ほどの叫びが驚きであれば、今回は未知な生物に対して脳が処理できず勝手に声が出てきてしまったのだろう。
「まさかいたいけな中学生に向かって発砲するとは……どこのどいつだから知らないが、――許さん!」
夏樹はアイテムボックスから魔剣を引き抜く。
片手で大きく振り上げると、にたり、と笑った。
「――死」
「待ちなさい、バーサーカー中学生!」
「あぼちっ!?」
魔剣を何の躊躇いもなく振り下ろそうとした夏樹の頬を、花子がグーで殴った。
「こいつを殺されると困るのよ」
「花子さん、どいて! そいつ殺せない!」
「血走った目がこわい! ちょっと、落ち着きなさい! この男は、都の父親よ!」
「……え? 都さんの」
「そう」
「パピー?」
「そ、そうね」
まさか、尻餅をついて口をぱくぱくして、今にも白目を向きそうな男が都の父親だとは思わなかった。
(……こんなこと言ったら失礼だけど、まったく似ていないね!)
一瞬、カッコウが脳裏で羽ばたいたが気のせいだと思うことにした。
「いやー、まさか都さんのパピーだったなんて、これは失礼をしました。僕、由良夏樹です! 都さんとはクラスメイトで、いろいろお世話してもらっています!」
「……世話をされている自覚があるようで何よりじゃ」
「あれ? でも、どうして都さんのパピーが俺に発砲するんだ?」
「このおっさんが発砲したんは、夏樹に驚いたからじゃて! 特に理由はないじゃろう!」
「なーんだ、誤解か。なら、許しちゃう! どうせ拳銃とか効かないし!」
「……人間なのに人間やめとるような発言に突っ込むべきかスルーすべきか悩むんじゃが」
夏樹は水無月俊平の腕を掴んで無理やり立たせる。
「それにしても、都さんのパピーと参観日以外で会えるなんて。あれ? じゃあ、茅さんのこと知ってます?」
「知っとるも何も、こやつが旦那じゃろうて! 元じゃが!」
「元じゃない!」
腰を抜かしていた男とは思えない、気迫のこもった声だった。
「茅お姉ちゃんと僕はまだ夫婦だ! じゃまなみずちがいなくなったのなら、僕たちの愛を邪魔する者はいないはずだったのに! 水無月家の奴らが僕と茅お姉ちゃんを引き離そうとするから、嫌だけど武力で制圧するしかないんだ!」
「え? お姉ちゃんってどういうこと?」
元とはいえ、夫婦の間でお姉ちゃんと呼ぶのは少しおかしい。
夏樹が珍しく動揺している。
「まさか、おどれも夏樹みたいに年上のお姉さんが好きなんじゃな!?」
「ちょっと小梅ちゃん!? 俺は年上のお姉さんが好みってわけじゃ! いえ、大好きですけど! 年下もいけるよ!」
「そんなん知っとるわ!」
「俺の性癖がバレバレすぎる!」
「いや、自分で言っとるじゃろうて」
「ふざけるなぁああああああああああああああああああああああああ!」
夏樹と小梅をやりとりに水無月俊平の絶叫が遮った。
「僕の茅お姉ちゃんへの思いを、ただの年上好きなんていう雑な括りにしないでほしいね! 僕は、年上のお姉さんが好きなんじゃない! お姉ちゃんが大好きなんだ!」
「――めっちゃ都さんのパパだわ」
「ほんまじゃな」
「遺伝子仕事しすぎだろ」
「生命の神秘よねぇ」
「人間怖っ」
夏樹と小梅が納得し、千手と花子が感心し、虎童子がドン引きした。