作品タイトル不明
80「気づけば背後にいるんじゃね?」①
銃声が続けて三度響いた。
「痛い! 痛いっ、痛いって言ってんのよ!」
頭部が潰れ絶命したと思われた水無月俊平が立ち上がり、花子に向けて拳銃を撃つ。
かちんっ、かちんっ、と弾倉が空になるまで引き金を引いた。
「地味にちくちくするんですけど! 何、このおっさん! なんで頭潰されて生きてるの? ――ははーん、ゾンビね! ドラマで見……あれ? ドラマだと頭を潰せば動かなかった気が……」
「ええいっ、ドラマのゾンビはどうでもええんじゃ! それよりも、こやつどうするんじゃ! 噛まれたら俺様たちもゾンビになるんか!?」
「に、逃げなきゃ!」
「いやいやいやいや、まずゾンビかどうかわからねえし、頭つぶれているだから噛まれないだろうし! 虎童子は鬼のくせに逃げようとするなよ!」
千手がツッコんでいると、水無月俊平の頭部が泡立ち修復されていく。
その光景はあまりにも悍ましく、鬼である虎童子でさえ口を抑えるほどだった。
「はっ、ははっ、これが、力だ! 見たか! 頭を潰されても、僕は死なない!」
「――あ」
小梅が、水無月俊平の背後に動く影を見つけ間の抜けた声を出した。
花子も、千手も、虎童子も、口を開けた。
「ふはっ、ふはははははは! 言葉もないだろう! 僕のこの力があれば、不死身の力があれば、僕は最強だっ!」
拳銃に弾を込めて、構える。
「僕は雅な人間だから、荒事が嫌いなんだ。だから、三下でも代わりに戦う奴らを集めたのに、お前たちのせいで台無しだよ。そうだ! いいことを考えた! 僕の実力がわかったのなら、僕に下僕となって水無月家を襲撃する手伝いをしてもらおう」
先ほども似たようなことを言っていた水無月俊平は、さもいいことを思いついたように言った。
力を誇示するように拳銃を見せつけている。
先ほど、花子にまったく通用しなかったことを気づいていないのだろう。
「うわっ、すご! これ、本物の拳銃なの?」
「そうさ! はぐれ霊能力者が持っていてね。護身用としてもらっておいたのさ。僕の手は誰かを殴るような乱暴には向かないからね。花や女を愛でるための手なんだよ」
「わかる。俺も河童さんのお皿を愛でるための手しか持っていないのに、イベントさんのせいで鏖殺ばかりして俺の手はピンク色に染まってしまった」
「……いやいや、そこは赤でしょう。なんでピンクなの?」
「意外と、人間の内臓ってピンクなんだよ?」
「そ、そうなんだ。君、若いのにいろいろ経験をしているようだね」
「いやぁ、それほどでも――あります!」
「あるんだ! いや、あるだろうけど!」
「……………………」
「……………………誰だ貴様!?」
当たり前のように会話をしていた水無月俊平自身が驚愕を貼り付けて叫んだ。
背後には、制服を着た中学生――由良夏樹がいたのだ。
「やあ! こんにちは! 知ってる? 黒船と一緒にギャラクシー河童勇者が日本に伝わったんだよ! そんなギャラクシー河童勇者三代目の由良夏樹くんです!」
「うわぁあああああああああああああああああああああ!?」
満面の笑みでよくわからないことを言う夏樹に向かい、混乱が極まったのか水無月俊平が拳銃を撃った。
二メートルにも満たない距離で撃たれながら、夏樹は表情を変えなかった。
「夏樹!」
「由良ぁ!」
さすがにその距離はやべえ、と小梅と千手が慌てるも、
「超余裕なんですけど!」
両手でハートを作り中指と中指で銃弾を掴む夏樹がいた。
「いや、無駄に技術すげえな! あと動体視力どうなってんだよ!? そもそもなんでここにいるんだよ!? びっくりしたからね! あ、なんかお腹痛くなってきた!」