作品タイトル不明
79「七森家と水無月家の当主のお話じゃね?」②
「……もしや、水無月家の力が衰えているからでしょうか?」
茅の言いたいことは康弘にもわかる。
土地神みずちは長年弱体化していった。それでも、向島市を守ることができていたのは、水無月家が心からみずちを信仰していたから。そして、茅の愛からだった。
だが、康弘にしたら、神を苦しめる時間を長引かせただけだとも思う。これは、七森家だからこその考えだ。
苦しんでいるのなら、解放してやるのも優しさだと思う。
「水無月家の弱体化は問題ない。むしろ、七森家が潰せなかったのだから、他の家では無理だろう」
七森家は水無月家を潰そうと企んだ。
だが、できなかった。
康弘は自他共に認める悪党であるが、悪党としては優秀な部類だ。
他の一族がどうかと言われたら、そこまでではない。
特に旧家は、水無月家もそうであるように、「何よりも一族の血を絶やさないこと」を第一にしている。
七森家は旧家だが、康弘は血を残すことを重きを置いていない。
血などいつか絶える。
今はどうにかなっても、少しずつ霊能力者が減っていくだろう。
狭い一族の中で血を残すことは、大変であり、面倒だ。ならば、血が薄まろうと、新しい血を取り込んだ方が頭がいい。
血が薄くなっても、七森家は残る。
両方を良いとこ取りすることはできないと割り切っているのだ。
対して、旧家はまず血を重視する。
なので、無駄に争うことを嫌う。
いくら弱体化しているとはいえ、土地神の守護がある水無月家にちょっかいをかけてもリスクしかないのだ。
「考えるのならば、新興一族か……新たな神々に通じる者の手か。できれば前者であれば楽でいい」
「……ええ、本当に。おっしゃる通りです」
七森康弘も、水無月茅も、「新たな神々」の存在を知っている。
院に所属する旧家の当主は、おそらく全員「新たな神々」について対応を決めているのだ。
簡単に言えば、関わらない。
それだけだ。
新しい神とは言え、人がどうにかできるわけではない。
何よりも、旧家は新たな神々を神として認識していない。
昔から存在する神々を、これからも神々として崇めていくだけなのだ。
ただ、新興一族は別だ。
新たな神々を利用して、のし上がりたいを考えている一族もいる。
結果など、考えるまでもない。
利用などできず、逆に利用されて終わりだ。
利用された上で、結果が伴えばいい。
だが、利用されて使い潰されて捨てられたのでは割に合わない。
それならば、対価を支払って魔族に願いを叶えてもらった方がまだ現実的だ。
「個人的に、一番面倒であるのが、新興一族が新たな神々と一緒になって何やら企んでいる場合だな」
「……可能性は否定できませんね」
「特に、水無月家は神々と交流があるため羨ましがられていた。今は確か、天使が土地神としてご降臨されていると聞いている」
「はい」
「他にも神々と関わりがあるとかも」
「……水無月家というよりも、雲海個人がなぜか交流が深いだけです」
「……たとえば?」
「伊邪那美様とSNSで連絡を取ったり」
「嘘ぉ!?」
「魔王サタン様と買い物仲間だったり」
「しゅごいっ!?」
「……やはり、康弘殿のキャラ崩壊してませんか?」
「そんなことないよぉ! 康弘くん、前からこんな感じだよぉ!」
散々、水無月家にちょっかいをかけてきた悩みの種と数年ぶりに顔を合わせたものの、愉快なおっさんになっていることに茅は動揺を隠せなかった。