軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

77「一般人だったらピンチだったんじゃね?」②

「あ、やっべ」

いかにも「やっちまった」と言わんばかりの花子の声が響いた。

彼女の拳の下には、拳銃を握ったまま頭部が潰れてしまった水無月俊平と、大きく広がった血溜まりだ。

「……やっちゃった! てへ!」

舌を出して誤魔化そうとする花子だが、彼女の拳は真っ赤に染まり、返り血が顔に跳ねている。

「なんも誤魔化せとらんのじゃがな!」

「鬼より容赦ねえな!」

「……こ、こいつが弱すぎるのよ! ちょっとぶん殴っただけじゃない! このくらいじゃ、せいぜい床に頭をぶつけてヒビ入れるくらいよ!」

「人間じゃと死んでしまうんじゃがのう」

花子の膂力は、人間には強すぎた。

「……それよりも、花子の姉さん。俺の一張羅をどうしてくれるんだろうねぇ」

花子と小梅、そして虎童子は目を逸らしていた千手に視線を向ける。

立っていた場所が悪かったのか、千手は水無月俊平の血肉を思い切り浴びてしまっていた。

自慢のスーツはもちろん、念入りに巻いた包帯と、サングラスまで真っ赤だ。

「……えっと、ごめんね。あ、ここに脳漿がついちゃっているから取っておくね」

「そう言う問題じゃねえだろ! 俺、今凄いことになってるぞ! 鏡見たくねえよ! 昔、ケチャップで遊んだときよりバイリーったいに酷いことになっている自信があるかなら! 俺が何をしたって言うんだ!」

千手はそれなりに稼いでいるフリーランス霊能力者である。

そのため、スーツはもちろん、サングラスまでブランドで揃えていた。

霊能力者という胡散臭く聞こえる仕事だからこそ、身なりに気を遣っているのに、その一番気を遣っているものが全て血まみれだ。

悲しいかな、口の中にも血が入って変な味がする。

正直、吐きそうだ。

「千手が吸血鬼じゃったら大喜びだったんじゃがのう」

「残念だが、俺は人間だよ! 由良がいなくても、俺はツッコミ役なのか!? そもそもツッコミ以前の問題じゃねえよ! クリーニング代は水無月家に請求してやる! ……いや、これクリーニングで済むか? 買い替えじゃね?」

「……やべ、雲海おばあちゃんに怒られる!」

「お姉ちゃんは、ちゃんと怒られるべきだと思うんじゃ」

「小梅に言われたくはないわよ! あんただって普段からやりたい放題じゃない!」

「えーっと、あたいがこんなことも言うのはどうかと思うんだけど、姉妹喧嘩の前に、このおっさん殺しちゃってよかったのか?」

虎童子がまともな疑問を浮かべると、花子は沈黙する。

「あ、やべ! 雲海おばあちゃんと茅ちゃんに生かして連れて来いって言われてたんだった!」

「ええい、このドジっ子さんめ!」

どうしよう、という雰囲気になった時、頭部を潰されて倒れていた水無月俊平の腕が動き、握りしめていた拳銃の引き金を引いた。

――乾いた音が響く。

「あいたっ!? ちょっとちくってしたんですけど!?」

弾が花子に当たるも、まったくダメージはなかった。