作品タイトル不明
76「一般人だったらピンチだったんじゃね?」①
拳銃を構えた水無月俊平は、震える腕で銃口を小梅たちに向けた。
「僕を馬鹿にするのなら、撃つぞ! 痛い思いをしたくないのなら、そうだな、僕の手足となって水無月家を乗っ取る手伝いをしろ!」
結局のところ、水無月俊平の目的は水無月家を手に入れるという俗な理由だった。
しかし、彼がどう足掻こうとも、水無月家を手に入れることは絶対にできない。
まず、土地神としてルシファー・花子がいる。この時点で、人間では詰みだ。
彼の妻だった、水無月茅をはじめ現役の霊能力者たちもいる。人を雇うことさえまともにできない男では、襲撃すら成功できなかっただろう。
仮にできたとしても、都と澪の友人には「やばい奴」がいる。何をどうしても、成功はしないだろう。
「わかったのなら、平伏しろ! 僕に跪け!」
――そもそも、拳銃ひとつでこの状況が好転すると思っていることが、間抜けである。
「ぎゃははははははははははははははっ!」
「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ」
小梅と虎童子が腹を抱えて笑った。
窒息してしまうのではないかと声を大にして笑う。
それもそのはず。
天使と鬼が、拳銃でどうにかできるわけがないのだ。
「――笑うな! 僕をっ、笑うな!」
「いやー、数年ぶりにこんなに笑ったんじゃが。俺様たちに銃が効くわけないじゃろう!」
「あたいも笑ったぜ。つーか、一応は霊能力者なのに、あたいたちが人間じゃないことさえ気づかないとか、もう雑魚すぎて雑魚すぎて……ダーリンとの赤ちゃんがお腹に宿りそうになるぜ!」
「虎童子ぃ! 意味わかんねえこと言うな! あと、姉さん! 俺は手を出していねぇ! 無罪だ! その前に、さすがに俺には拳銃は効くぞ! というわけで、あとは頼んだ!」
千手は停止の魔眼を持っているが、さすがに拳銃への対処はできない。
できるかもしれないが、リスクが高いことはしない主義だ。
「美少女の後ろに隠れるとは……千手もまだまだじゃのう」
「いいんだぜ、ダーリン。ダーリンがあたいを盾にしようとも、耐えてみせる!」
「人聞きの悪いことを! こっちは当たりどころによったら死んじまうんだよ!」
人間枠である千手は、天使と鬼の背中に隠れる。
「夏樹ならなんとかできるじゃろうて」
「人間の中でも一番規格外の人間を出さないで!」
夏樹なら問題ないだろう。
動体視力も膂力も、千手の比ではない。
心臓や脳を直撃しない限り、銃で撃たれたとしても「痛っ!」で済ませそうな気がする。
「だからっ、僕を無視して話をするなぁあああああああああああああ!」
「そもそも撃たせなきゃいいだけの話でしょう。さっさとぶっ潰しなさいよ」
怒りに任せて引き金を引こうとした水無月俊平を、花子が背後から容赦無くぶん殴った。
ぐしゃり、と音がして、水無月俊平の頭部が潰れた。