軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

75「変装は潜入の基本じゃね?」

「な、なんで千手がおるんじゃ!? しかも、そんな……夏樹が喜んで小躍りしそうな格好をしよって」

さすがの小梅も驚いた。

まさか変質者を探して襲撃かけたら、七森千手と虎童子がいたのだ。

しかも、男の子なら一度は通った厨二病全開の腕に包帯を巻いた姿だったのだから。

「だから変装ですって。現在、潜入中なんです」

「――つまり、潜入調査じゃな!」

「イエスっ!」

小梅と千手は親指を立てる。

ちなみに、腕に包帯をぐるぐる巻きにして、無駄に腕を主張するようにシャツの袖をめくっている千手は、いかにも訳ありですといった眼帯もしている。

両目が魔眼である彼が、片目だけ。変装、と言っていいのか、悩ましい。

「だから、そんな変な格好しなくてもって言ったのに」

虎童子は、ハーフパンツにオーバーサイズのTシャツ姿だ。

潜入のための変装をそもそもしていない。

ある意味、強い鬼である彼女が人の中に紛れている時点で、ある意味変装なのかもしれない。

「虎童子……俺はこれでもフリーランスの霊能力者だ。言ってみれば、探偵みたいなもんだ。探偵の基礎は変装だろう!」

「ダーリンのことはなんでも肯定してあげたいけど違うと思う」

「千手……ツッコミの勇者がボケてどうするんじゃ」

千手自身は、ボケている気はないのかもしれないのがタチが悪い。

「――いい加減にしろぉおおおおおおおおおおおおおお!」

急に叫んだのは、完全に無視されていた水無月俊平だった。

「あ、忘れたんじゃ」

「忘れたな」

「忘れる以前に覚えてもいなかったぜ!」

「僕を馬鹿にするなぁあああああああああああああああああ!」

唾を飛ばし、目を地走らせて水無月俊平が叫んだ。

「お、お前は! 僕が雇ってやったんだぞ! 僕を守ろうとか思わないのか! なんで襲撃者と一緒になって笑っているんだ!」

「雇ったと言われてもなぁ。俺もいろいろ裏稼業はしてきたが、依頼料をケチって、前金もない荒事は初めてだぜ。あんた、一応は水無月家の出身なんだから、支払い形式と相場くらいはちゃんと把握していろよ。だから、三下以下のはぐれしか集まらないんだよ」

水無月家といえば、院に所属する旧家だ。

その歴史は長く、また家の存在価値も高い。

そんな水無月家に生まれた者は例外なく、厳しい訓練を受け、霊能力者として育てられる。しかし、意外と水無月家は全員を霊能力者にするつもりはないのだ。最低限、家を存続できれば、人知れず人々を守る仕事が続けられればそれでいいと考えてる。

本家は無理でも、分家には職業選択の自由がある。

だが、それを踏まえた上で、霊能力者としてやっていける「常識」も授けられるのだ。

例えば、依頼を受けるに当たっての相場。

協力関係にある霊能力者への依頼料。

迷惑をかけた一般人へのその後のサポートや見舞金。

あげればキリがないが、霊能力者であると同時に人として最低限のことは当たり前として学ぶのだ。

――水無月俊平は、ある意味、水無月家の長い歴史の中で突然変異と言える愚か者だった。

「いい大人が癇癪を起こしたように叫ぶだけか。情けない」

「ところで、結局、こやつは何がしたいんじゃ?」

「あー、なんか水無月家を襲撃して自分の存在理由をわからせるとかなんだか言ってたなぁ。途中途中で無駄話が多くて、話がすぐ脱線して、隙あれば自分語りするから結局何がしたいのかよくわからないし、半分寝ていたぜ!」

「……銀子の推理が大当たりじゃなぁ。本当に何も考えとらんかった」

「考えることができるのなら、犯罪行為を行っているはぐれ霊能力者を集めたりしねえだろ」

「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れぇええええええええええええええ! 僕をっ、馬鹿にするなぁああああああああああああああ!」

千手と小梅に言いたい放題言われた水無月俊平は、再び激昂し、懐から拳銃を取り出した。