作品タイトル不明
72「慣れればそれが日常じゃね?」
ルシファー・花子は魔王サタンの娘である。
単純な力なら、子供たちの中で一番の強さを持っている。
ただ、今までは性格的にその力を発揮することはあまりなかったのだが、現在の花子は違う。
周囲に配慮しつつも、その中でできる全力を使いこなせる気遣いのできるパワータイプ天使として、先日も新たな神々と戦っている。
そんな花子の日課はパトロールだ。
水無月家としては、花子が土地神としていてくれるだけで意味があるのでそこまでしなくていいと言ってくれたのだが、花子としてはやるならきっちりと最後までやり遂げるがモットーであるため、自慢の翼で向島市の空を飛んで見回っているのだ。
いろいろ拗らせる前の花子は人付き合いが得意で、責任感も強かった。
だからこそ、一度請け負った仕事に全力で挑むのだ。
――だが、さすがの花子も、水無月家の前でぶつぶつ言っていた変質者が都の父親だとは思いもしなかった。
世話になっている水無月家の人間をぶっ飛ばしてしまったことを知り、謝罪したが、茅は笑顔のまま「全く気にしません。むしろ殺し……いえ、なんでもありません」と含み笑いをして、都に至っては「え? 私はお姉ちゃんへの愛から生まれた妖精です」と訳のわからないことを言い出し花子を混乱させた。
水無月俊平という不審者の存在に気づいた雲海から事情を聞いた花子は、茅が形だけとはいえ元夫を明らかに嫌悪している様子や、都が父親の存在をいないものとしているのも理解できた。
分家の人間とも話をしたが、失踪扱いになっているが、水無月家の名前を使って結構やりたい放題やっていたそうだ。
おとなしくなったので、どこかでのたれ死んだと喜んでいたのに、なぜ今更、と嘆いていた。
「というわけで、向島市の土地神として水無月俊平は排除する変質者認定しました! ただ、どこかに隠れているみたいだから、手を貸してちょうだい?」
「……なーんで俺様たちが、そんなことせにゃあかんのじゃ」
「お小遣い出るわよ」
「――天使として変質者は見逃せん! この小梅・ルシファーがいる限り、向島市に変質者などのさばらせはしないんじゃ!」
「あんたのそういう現金なところ、大好きよ!」
現金な小梅が花子の仲間に加わった。
「銀子、あんたもいくわよね?」
「いやー、警察官の自分が不審者とはいえ勝手に捕まえるのはどうかと思うっすけどねぇ」
「お供物でもらったえぐい値段のウイスキーをあげるわ」
「――私は正義の味方になりたくて警察官になったっす! 不審者許せないっす!」
「……私がいうのもなんだけど、あんたも小梅もちょろいわね」
銀子も仲間に加わった。
「あー、一応言っておくが、パパは仲間にならないからな」
「女子のグループにおっさんを誘ったりしないから安心してちょうだい」
「それはそれで寂しいよ! 誘ってよ!」
「面倒臭い魔王ね……」
サタン的には断るのは前提として誘ってはもらいたかったようだ。
しくしくと泣き始めてしまった。
「というか、水無月家の変質者なら水無月家に戻ってくるんじゃないの? そこをとっ捕まえて八つ裂きにすればいいじゃない」
星子が冷めた目を花子に向けた。
「そこまではしないわよ! それに」
「それに?」
「べ、別に夏樹たちが変なイベントに巻き込まれる前に解決しておこうなんて考えてないんだからね!」
「――こ、この女、私のツンデレキャラの立場を侵害するつもりなの!?」
星子は戦慄した。
この女できる、とライバルが誕生した瞬間を確かに見た。
「……なにこれ、このノリが毎日続くの? 狂気じゃん」
いつもの由良家のノリに菜々子がドン引きした。