作品タイトル不明
73「ネーミングセンスって大事じゃね?」①
「な、なんで私ばっかりこんな目に遭うっすか!」
青山銀子は、星子を肩車しながら全力疾走していた。
「待て! 待て、おい! 待てっていってんだろぉ! ああん!?」
銀子の背後からは、黒服に身を包んだ強面の男達が追いかけてくる。
それぞれ武器を持っており、待てと言われて足を止めようものなら何をされるのかわからない。
――追いかけられているのがただの一般人であれば、の話だが。
「……水無月俊平め……絶対にその名前を覚えたっすよ。なんで霊能力者が家から拒絶された腹いせに、はぐれを大量に雇うっすか!? 自分の家にマイナスなことをして、どうして受けいれられると思うっすか!?」
「叫ぶのはいいから、とっとと殺っちゃいなさいよ」
「夏樹くんの相棒だけあって発想が物騒っす! 一応っすね、私も警察官なので一般市民に危害を与えるわけにはいかないんすよ!」
「……一般市民? あれが? そうなの?」
星子が不思議そうな声を出した。
銀子の足がぴたり、と止まる。
「……よく考えたらまったく一般市民じゃないっすね! ぶっ殺していい案件っす!」
「じゃあ、さっさとやりなさいよ!」
「……降りてくれないっすか?」
「嫌よ。歩くの面倒くさい」
星子は頑なに銀子の肩から降りようとはしない。
単に面倒くさいからと言っているが、実際は、実体化したばかりで歩きなれていないのだ。
移動に問題はないが、走れば疲れてしまうのは人間と変わらない。しかも、体力的には子供と遜色ないのだ。
「やれやれ、仕事ができる銀子さんでよかったっすね! あ!」
「なによ!」
「魔剣太郎と魔剣花子を家に忘れてきちゃったっす!」
「――――あんたね! 性癖だけじゃなくて頭まで腐ってるんじゃないの!?」
「腐ってなんかいねーっすよ!」
「仕方がないわね! 受け取りなさい!」
星子が指を鳴らすと、銀子の眼前に一本の無骨な剣が現れる。
「――まさか、これは」
ごくり、と銀子が唾を飲んだ。
「大大大大大大大大サービスで、私の力を使わせてあげる! べ、別にあんたに何かあったら夏樹が悲しむとかじゃないんだからねっ!」
「ツンデレまでしてくれるとか、銀子ちゃん感激っす!」
「ふん! 勝手に戦えばいいのよ!」
「合点承知!」
銀子が剣を握る。
霊力が剣に吸い取られると同時に、この剣の本質を理解した。
かっ、と銀子が目を見開いた。
「――命名! 雷二郎っす!」
「名前だっさっ!」
「ださくないっす! 今日の銀子ちゃんは劇場版っすよ!」
銀子が剣――雷二郎を薙ぐと、金色の雷が背後から迫るはぐれ霊能力者たちを焼いた。
■
――時間は少し遡る。
小梅、銀子、星子、花子の四人は変質者こと水無月俊平を探していた。
当てもなく探しているわけではない。
「私が調べた限りっすけど、水無月家を堂々と名乗る男がはぐれ霊能者を金で集めたみたいっすね。弱い奴らばかりっすけど、悪さにかけては一級品みたいな屑のお手本ばかりっすよ」
「……意味がわからんのじゃが!? 絶縁されとるとは言え、自分の家に襲撃でもかけるつもりなんか!?」
「私の経験っすけど、何も考えていないと思うっす! いや、考えてはいると思うっすよ。花子さんにぶっ飛ばされて、腹が立ったから仕返ししてやろうって。なんだったら、集めた武力で水無月家を乗っ取って俺が当主だーって」
「そこまでお馬鹿さんじゃと、野に放ったらいかんじゃろう!?」
銀子は星子を肩車したまま街中を走り、小梅は銀子に並走して飛んでいる。
花子は、三人とは離れて上空から少し先を見ていた。
「この先のビルに集まっているみたいっすよ!」
「詳しいのう、銀子!」
「水無月俊平はSNSで募集していましたから」
「ガバガバすぎじゃろう!?」
集まっている場所がわかるのならば、襲撃すればいい。
無力化させて終わりだ。
できることなら、外部から全力で攻撃してビルごと消滅させたいが、日中の街中では不可能だ。
「小梅、銀子、星子。――ビルの三階に、あの変質者がいたわ。襲撃するわよ」
「ちょ、待ってほしいっす! 花子さん! せめて作戦を――」
銀子の言葉が終わるよりも早く、花子が勢いよくビルへ突っ込んだ。
轟音が鳴り、地面が揺れる。
「ぎゃぁああああああああああああああああああ! 始末書ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
銀子が叫んだと同時に、ビルの中から強面のはぐれ霊能力者たちがわらわらと現れた。
「銀子! 雑魚は任せたんじゃ!」
「ちょ、か弱い銀子ちゃんにこんなおっかない連中を丸投げとか鬼畜すぎるっす!」
「俺様は、狙った獲物しか狩らん!」
小梅が消えると、はぐれ霊能力者たちが銀子を見つけた。
「てめえが、襲撃者かぁああああああああああああああ! なにしてくれとんじゃ、こらぁああああああああああああああああああ!」
「ひえぇええええええええええええええええええ!」